「PK101」の筐体を開け,光学モジュールを取り出す(分解その1)。光学モジュールの分解に取り掛かる前に,まず,モジュール周りに取り付いている銅板を外す(図1)。銅板とともに,銅板に接着してあった赤緑青(RGB)のLED光源が一緒に外れる。光源を実装したフレキシブル基板には,台湾Young Optics社のロゴが記載されている(図2)。LEDがどのメーカーのものか不明だが,「台湾メーカー製ではないか」(あるLEDメーカーのマーケティング担当者)とみる。
モジュールに取り付けた銅板により,LED光源の裏面から発する熱を拡散している。この銅板を通じて,プロジェクター上側の金属筐体に熱を伝導し,放熱する仕組みを採っているようだ。そのため,PK101には空冷用のフィンがもちろん,通気孔の穴も見られない。筐体には,スピーカー用の穴だけしか空いていない。
さらに,銅板と接する筐体の内側部分に熱拡散用とみられるシートが張り付けてある(図3)。筐体へ効率良く熱を伝導して放熱性を向上させる狙いがありそうだ。熱源はLEDだけではない。表示素子のDMD用の駆動LSIや,映像処理LSIも「大きな熱源となる」(ある技術者)。そのため,同種のシートがDMD駆動LSIや映像処理LSIに接するように,金属筐体の内側に張り付けてある。
フライアイ・レンズに強い関心
いよいよ光学モジュールを開く。光学設計は「基本に忠実」(プロジェクターに詳しいある技術者)だが,特徴的な光学部品が使われていた。技術者が注目したのは,表面に複数の小さいレンズをアレイ状に並べた「フライアイ・レンズ」である(図4,5)。このレンズは,表示素子であるDMDへ入射する光の明るさを均一化し,映像の明るさのムラを抑制する「インテグレーター」として搭載されたようだ。一般に,DMDを採用するプロジェクターでは,インテグレーターとして「ロッド・レンズ」を搭載するという。
フライアイ・レンズの各レンズは平行四辺形のような形状をしており,「DMDのμmオーダーの微小ミラーそれぞれに光を効率良く入射するための工夫ではないか」(前出の技術者)とみる。このレンズだけでなく,DMD付近に配置したミラーも,DMDの微小ミラーに光を効率良く入射するために水平方向と垂直方向にも傾けて置いてあるようだ。
ここまででPK101の分解はひと段落。続いて米3M社製の「MPro110」の分解に着手する。
――次回に続く――
日経エレクトロニクスは2008年12月29日号に,超小型プロジェクターの分解記事を掲載する予定です。