906iシリーズでは,ベースバンド処理機能を備えたアプリケーション・プロセサの採用も目立つ。NECは,系列のNECエレクトロニクス製の「Medity」を採用した。NECとパナソニック モバイルコミュニケーションズを除く残りの3社は,ルネサス テクノロジの同様の機能を持つ「SH-Mobile G2」を採用している。

 メイン・カメラ部では,実装面積の削減を図り,カメラ・モジュールの下部に画像処理用のDSPなどを配置しているようだ(図5)。このほか,電力供給用の外部端子とイヤホン端子を一体化した端子を採用し,端子数を減らして実装面積の削減を図っている。ただし,こうした端子を採用すると,従来の丸型や平型のイヤホンを使う場合には,ユーザーは変換アダプタを使わなくてはならない。


図5 カメラ・モジュール下部にDSPを配置 906iシリーズのような高級機種では,一つの部品になるべく複数の機能を盛り込んで,実装面積の削減を図っている。例えば,画像処理用DSPをカメラ・モジュール下部に配置して実装面積の削減を図る機種がある。写真はN906iの,有効画素数が約520万画素のカメラ・モジュール部品である。

グラファイト・シートを採用

 薄型化と高密度実装を推し進めると,部品コストや実装コストが高くなるだけでなく,筐体内に熱がこもりやすくなってしまう。携帯電話機では,アプリケーション・プロセサやカメラ・モジュール,パワー・アンプなどが大きな熱を発するという。

 薄型化に注力したN906iμでは熱拡散の効率向上を狙って,Cuに比べて5倍ほど熱伝導率が高いグラファイト・シートを筐体内部に張り付けている(図6)。放熱効果は高いものの,高価である。薄型機における熱対策の優先度の高さがうかがえる。


図6 グラファイト・シートを使い,効率よく熱拡散させる N906iμでは,熱伝導率が高いグラファイト・シートを使い,効率よく熱拡散させている。Cuなどに比べて熱伝導率が高いため高い放熱効果が期待できるものの,価格が非常に高い。

―― 次回へ続く ――