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コピーに自由を ―生まれ変わるDRM―(第4回)

著作権法がどうあろうと「翻案文化」は止められません(東京大学 中山信弘氏)

竹居 智久=日経エレクトロニクス
2008/08/18 09:00
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今回からは,著作権法やDRM技術に詳しい専門家のインタビューをお届けする。まずは,知的財産法学の大家である中山 信弘氏に聞いた。(本稿は,日経エレクトロニクス,2008年3月10日号,pp.62-63から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

中山 信弘氏 東京大学 法学政治学研究科・法学部 教授


(画像のクリックで拡大)

 現在の著作権法がパンクしてしまっているのは,誰の目にも明らかです。現行の著作権法は,プロのクリエーターとプロのメディア企業との契約を想定しています。制定当時は関係するプレーヤーが限られていたんです。それがインターネットの登場やデジタル技術の発展で,誰もが関係する法律になった。機器メーカーも含めたいろいろな企業,そして一般の人たちもかかわってきます。それなのに,1件1件の許諾を前提としている。つまり,マスに対応できていないんですね。

 では,どう直したらいいのか。それが見えていません。日本だけでなく,世界中の国が困っています。一番いいのは,デジタル化を前提に法律を抜本的に変えることですが,これが難しい。各国の著作権法は世界各国が批准した基本条約を基にしており,条約の改正には各国の利害が関係するからです。業界の慣行や契約内容を変えたり,著作権を集中的に管理できる仕組みを整えたりして,その上で最低限の法改正をする。もどかしいですが,この組み合わせで徐々に変えるしかない。

法律は後から調整する手段


1969年,東京大学 法学部卒。1984年から現職。国内における知的財産法学の第一人者。内閣府や省庁の知的財産法関連の各種委員会にも名を連ねる。2006年からクリエイティブ・コモンズ・ジャパン 理事長を兼任。 (画像のクリックで拡大)

 インターネットやデジタル技術の存在を前提として前もって著作権法を改正しようとするのは,順番が違います。法律はビジネス形態ありきなんですね。実際にビジネスを始めてみて不都合が生じた場合に,それを調整する手段が法律です。もし,その新しいビジネスが正しくコントロールできているのであれば,法律は介入しなくていい。

 例えばある新しいビジネス形態で,ユーザーが高い利便を得た代わりに,クリエーターの収入が減ってしまい創作活動ができない状況になるとします。優先しなければならないのは,あるべき姿です。創作活動を可能にするためには,メディア企業が利便性を売りにコンテンツを高く販売して,そこで得た収入をクリエーターに還元すればいい。それができないときに初めて法律の出番になります。利便を得たユーザーに対して,クリエーターへの還元を義務付けるわけです。社会の要求に合った利益還元システムさえ作れれば,根拠は法律でなくても何でもいいんです。

YouTubeはなくならない

 プロとアマの境界が入り乱れてしまったのが,デジタルの世界だと思います。線引きがあいまいになりました。今,インターネット上には元の著作物を改変したコンテンツがあふれていますね。私はこれを「翻案文化」と呼んでいます。つまり文化の大衆化です。

 ほとんどの創作活動は,人の創作物から得た着想などを基に始まりますよね。デジタル化は,特別な設備や才能を持たなくても自己表現ができる環境をもたらしました。そしてインターネットによって,それを容易に発信できるようになりました。

 「YouTubeは違法だ」などと文句を言っていても,絶対になくなりませんよ。翻案文化は著作権法がどうあろうと発展していくでしょう。それなら,文句を言っているだけではなく,合法的に使えるように取り込むべきだと思います。(談)

―― 次回へ続く ――

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