電子情報技術産業協会(JEITA)常務理事の長谷川英一氏
電子情報技術産業協会(JEITA)常務理事の長谷川英一氏 (画像のクリックで拡大)

 2008年7月4日午前4時。地デジ対応録画機など向けの新しい著作権保護ルール「ダビング10」への運用切り替えが,当初予定の6月2日から約1カ月遅れで無事に実施された。ダビング10の実施が遅れた背景には,文化庁 文化審議会傘下の「私的録音録画小委員会(録録小委)」における権利者とメーカーの深刻な対立があった。この対立のあおりを食って一時休止状態にあった録録小委は7月10日に再開される予定だ。録録小委の委員でもある電子情報技術産業協会(JEITA)常務理事の長谷川英一氏に,今後の私的録音録画補償金制度について話を聞いた。なお,このインタビューは6月24日に行った。(聞き手は山田剛良)


--ダビング10の実施が当初の予定より約1カ月遅れたことに関してどのように考えているのか。

長谷川氏 ダビング10の合意は我々だけでなく,関係者全員がギリギリまで真摯な議論をした成果だと思っている。開始が1カ月遅れたことで消費者に迷惑を掛けたが,我々なりに一生懸命やった結果である。現時点で交渉の過程に悔いている部分はない。

--ダビング10の延期に至った対立は,2008年5月8日の録録小委今期第2回で文化庁が提示した,いわゆる「文化庁提案」にJEITAの委員などが強い懸念を示したことで表面化した(Tech-On!関連記事1)。文化庁提案に関して現在はどう考えているのか。JEITAが5月30日に公表した声明(Tech-On!関連記事2JEITAの声明)では「受け入れられない」「容認できない」といった強い否定の言葉が並んでいる。

長谷川氏 文化庁提案を拒否しているわけではない。ただし,文化庁提案には我々が懸念する事項がいろいろ書かれている。5月8日の会合で申し上げたとおり,我々はこの懸念に対して文書による回答を待っている立場だ。文化庁提案自体はこれまでの録録小委の議論の一貫した流れの中にあると思っている。(ダビング10の実施によって)文化庁案の一部が合意できたという理解をしている。録録小委の再開時には,文化庁案と我々の懸念に対する回答文書をベースに,続けて議論していけば良いと思う。もちろん,事務局(文化庁)が議論の出発点として異なるアイデアを持っているのであれば,それに従う。