電子情報技術産業協会(JEITA)は2008年5月30日,私的録音録画補償金やダビング10に関する公式見解を発表した(発表資料)。同日に開催された2008年度役員の就任会見におけるJEITA 会長の庄山悦彦氏の発言(Tech-On!の関連記事1)と同様に,一般消費者の意見を重視するという姿勢を鮮明にしている。

 まず私的録音録画補償金制度については,本来は「私的複製が際限なく行われることで権利者に重大な経済的損失が生じる場合に,それを補償しようとするもの」であり,コンテンツの利用範囲を技術的に制御しやすくなる中では「消費者の意見を十分に踏まえ,デジタル技術の発展に伴って補償金制度を縮小・廃止していくことが原則」とした。

 文化庁が2008年5月8日に示した補償金制度改定に関する暫定案では,新たに補償金の対象に追加する機器としてHDDレコーダーや携帯型音楽プレーヤーを挙げた(Tech-On!の関連記事2)。JEITAは今回の公式見解で,この案を受け入れられないことを改めて示した。その理由として,新たに対象となる機器は「権利者の経済的損失を直接生じせしめるものではない,いわゆるタイムシフト・プレイスシフトを目的とするもの」であるため,「こうした機器を補償金の対象とすることは補償金制度の趣旨に照らし合理性はなく,従って,消費者に不合理な負担を強いるものである」と説明した。

 ダビング10については,「消費者がよりコンテンツを楽しむことができるようにする方策であり,JEITAとしても,決定どおりに実施すべきものと考える」とし,「ダビング10の予定通りの実施に向けた作業が進んでいないことは残念である」とした。このダビング10の実施と補償金制度の改定がセットであると権利者団体らが主張していることについて,「ダビング10は,技術的に複製回数を制限するものであるから(中略)一般論として補償金の対象とすべきではない」との見解を示し,「ダビング10に対応する機器を補償金の対象とすることには反対」とした。

 JEITAはこの公式見解の中で,「権利者に適正な対価が支払われるべきことは当然ですが,デジタル化によって技術的にコンテンツの利用をコントロールすることが容易になっていく中で,消費者に対する補償金のご負担をどうすべきか総合的な議論が必要です」と説明し,補償金の議論に今後も主体的に参加していくとした。