米Microsoft Corp.が米Yahoo! Inc.に対して446億米ドルの買収提案(Tech-On!関連記事)をした背景には,Microsoft社の「Windows Live」戦略が思うようにビジネスにつながっていない点がある。

 今からほぼ2年前の2005年11月。米Microsoft Corp.,ChairmanのBill Gates氏は米サンフランシスコ市で,インターネット検索やWebサービスを提供する「Windows Live」戦略を公開し,同社は次の5年間はこの戦略をベースにすると高らかに宣言した(Tech-On!関連記事)。

Windows Liveは,Web 2.0に対するMicrosoft社の「解答」である。今ではMicrosoft社にとって強力なライバルとなった米Google Inc.に対抗するための,明日を賭けた重要な戦略なのである。しかし,現時点ではWeb 2.0的な世界におけるMicrosoft社の存在感は正直言って薄い。実際,米国シリコンバレーのWeb開発者が集まると,「AJAX」や「Ruby on Rails」,Google社や米Yahoo! Inc.,米Facebook, Inc.が公開しているサーバーAPI,米Adobe Systems Inc.の「Adobe Integrated Runtime(AIR)」(Tech-On!関連記事)などの技術がよく話題にのぼるが,Microsoft社の技術は「Silverlight」(Tech-On!関連記事)以外に,あまり話題にならない。こうした状況を解決しないと,次世代のコンピューティング・プラットフォームにおいてMicrosoft社は脇役的な存在になってしまうとの危機感が同社にあったと推測できる。

Yahoo!社はこの数年で,Web 2.0の先駆けとなる写真共有サービス「Flickr」やWebブックマークの共有サービス「Del.icio.us」などの提供企業を数多く買収した。こうした企業買収がYahoo!社の業績に好影響を与えたかどうかについては疑問が残るが,Web開発者の中でYahoo!社の存在感が高まったのは事実だ。Microsoft社によるYahoo!社買収提案の狙いの一つは, 次世代のコンピューティング・プラットフォームを先導するWeb開発者の心をつかむむことにもある,と筆者はみている。