「我々は5年ごとに新たな方向性を示してきた。1990年にWindowsを公開し,1995年にはインターネット戦略を,そして2000年にはXML中心の「.NET」戦略を示してきた。そして今日は,次の5年間の話をする。」(米Microsoft Corp.,chairman兼chief software architectureのBill Gates氏)。
米Microsoft Corp.は,2005年11月1日,米サンフランシスコで記者発表会を行い,同社の新型オンライン・サービス「Windows Live」および「Microsoft Office Live」を発表した(発表資料)。同社が既に提供済みのXbox Liveと同列に位置づける。Windows Liveは,ユーザーのパソコンなどにMicrosoft社のサーバからインターネット経由でアプリケーション用のサービスなどを提供する,いわゆるwebサービスのプラットフォームである。個人用のWebサイトの設定や電子メール,VoIP,インスタント・メッセージ,検索など,インターネット関連の複数アプリケーション・サービスを提供する。Microsoft Office Liveは中小企業向けのサービス群で,主に業務用アプリケーションを提供する。いずれもサービスに広告を付加することで,ユーザーには無料で提供する。Microsoft社は同社が運営するオンライン広告ネットワーク「MSN adCenter」経由で広告収入を得る仕組みだ。有料の会員向けサービスも用意する。
次世代のwebサービスに関しては,米Google Inc.や米Yahoo! Inc.などが検索エンジンを中心にサービスを拡充し始めている。米Microsoft社はこのオンライン・サービスを,Google社などへの対抗軸と位置付ける考えだ。発表会には同社chairman兼chief software architectureであるBill Gates氏と2005年4月に同社CTOとなったRay Ozzie氏が登壇するなど,久しぶりに力の入った記者発表会となった。
Microsoft社は,Windows LiveとMicrosoft Office Live をあわせ,Microsoft Live Platform と呼ぶ。Microsoft Live PlatformではRSSやAJAX(Asynchronous JavaScript and XML),ピア・ツー・ピア技術,クライアント上でのソフトウェアを組み合わせ,Microsoft社が運営するサーバからインターネット経由でユーザのパソコンや携帯電話機にサービスを提供する。発表会では,今日からベータ版として提供を開始した「Live.com」で,ユーザが自分の好みに応じてWebサイトの設定ができることを示した。そこでは,Microsoft社の新型検索エンジン「Windows Live Search」の検索結果を保存したり,RSSで提供する情報や写真集を表示する場所を設定できる。他のサービス例では,ピア・ツー・ピア機能による写真や他のファイルを共有可能な「Windows Live Messenger」のインスタント・メッセージ・サービスや,パソコンの状態の遠隔モニタリングおよびファイルのバックアップ・サービスなどを提供する「Windows OneCare Live」がある。Microsoft社はLive Platform系のサービスをベータ版から通常版に移行する時期を明示しなかった。こうした手法は,Google社が同社のオンライン・サービスの製品化に用いたプロセスを彷彿とさせる。
Windows系の端末以外も狙う
Microsoft社は発表会で,「Microsoft Live Platform系のサービスは,WindowsやMicrosoft Officeを置き換えるものではない。さらに,ポータル・サイトである『MSN』の運営も続ける」と語った。同社は,Live Platformに対応するために必要な情報は,サード・パーティや競合事業者を含むほかのサービス事業者に提供する方針である。これにより,サード・パーティによる新サービスの登場を期待している。
同社はパソコンに限らず,Windows系のOSおよび他のOSを搭載する携帯端末などでも,このLive Platformを動作させる考えだ。発表会では,地理情報サービス「MSN Virtual Earth」(Tech-On!関連記事)上で,地方情報検索サービス「Windows Live Local」を使って検索したサンフランシスコ市の地理情報を,三洋電機の携帯電話機に転送して表示する実演を見せた。