東芝は,予告通りに「Cell Broadband Engine」のプロセサ・コアSPE(Synergistic Processor Element)を4個集積した,メディア・ストリーミング処理プロセサ・チップ「SpursEngine」を「CEATEC JAPAN 2007」で展示した(Tech-On!関連記事1)。
多くのメディアがその応用デモンストレーションについて報告しているが(例えばTech-On!関連記事2),LSI設計を担当する筆者としては,そうしたデモンストレーションよりも,チップそのものをよく見てしまった。説明員によれば,今回のチップは65nm世代のプロセスで製造したという。見たところ,チップの大きさは1cm×1cm弱といった感じである。
SPEは4隅にある。かつて金属配線層数が少なかったころは,電源やクロックの関係で,大きなマクロ・ブロックは4隅にしか置けないチップもあった。最近のチップでは珍しいレイアウトと言える。
その辺りを説明員に聞いたが,「チップの中央部分はSPE間の接続に使っているが,それ以上の詳細は話せない」とのことだった。ブロック間の遅延時間調整のために4隅に配置しているのか?。CEATEC会場では理由は不明だったが,分かったら報告したい。
MePベースのSoCプラットフォームを発表
Cell BEやSpursEngineは集客の目玉にはなるが,ビジネス的には「これから」である。一方,現在のSoC事業に直結するトピックとしては,同社のSoCプラットフォーム「Venezia」である。Veneziaは,同社のブースではあまり目だっていないが,同社のCEATEC JAPAN 2007のWWWサイトには掲載されている。
さらに,同社セミコンダクター社システム技師長の藤田康彦氏が10月4日に行なった出展者セミナー「マルチメディア用システムLSIの取り組み」では,Veneziaの説明があった。今やSoCプラットフォームの代名詞となった「UniPhier」と基本的には変わらない。ただし,UniPhierプロセサの代わりに,Veneziaでは東芝のコンフィギュラブル・プロセサ・コア「MeP」とDSPコア「IVC2」をベースとしている点は異なる。
Veneziaの投入で,東芝は現在三つに分かれているマルチメディアSoCの製品系列を一つに統合する。すなわち,普及版の「S1」,高機能版の「T5」,ゲーム機用の「G2」をVeneziaベースの「T6」に集約していく。VeneziaベースのSoCの最初の品種は2009年に登場するという。
UniPhierはソフトウェアの再利用率が84%
VeneziaにしろUniPhierにしろ,プラットフォームの導入の大きな効果がソフトウェアの再利用率向上である。松下電器産業は,今回のCEATECの初日夕方に,CEATECの会場ではなく都心でUniPhierに関する説明会を開いている(Tech-On!関連記事3)。 そこではUniPhierの効果に関して二つの定量的な報告があった。
一つはDVD&HDDレコーダ向けの最新のUniPhierチップでは,ソフトウェアの再利用率が84%と高かったことである。このチップはDVD向けのUniPhierとしては2代目になるが,UniPhierプラットフォーム前の「PEAKSプロセッサー」のソフトウェアも使われている(Tech-On!関連記事4)。
もう一つの定量的な報告は,UniPhierチップを搭載した機器の増加である。2007年9月末現在,UniPhierチップを搭載した機器は,22シリーズ83品目になったという。