任天堂の新型ゲーム機「Wii」を分解して驚くのは,低コストを狙い,徹底的に練られた設計である(Tech-On!関連記事)。一目見てシンプルと分かるメイン・ボードに載る部品点数はおそらく1000を大幅に切る少なさ。いくつかのカスタムLSIとゲームキューブとの互換性を保つためのコネクタ類を除くと,大半の部品に汎用品を採用している。ある部品メーカーの技術者は「汎用品なら価格も安いし,今後必要に応じて供給メーカーを自由に変えられる」と舌を巻く。
ただし,Wiiの設計方針は決して低コスト一辺倒ではない。ここぞという部分には思い切ってコストを掛けるメリハリがある。その象徴が金メッキ部品の多用である。耐腐食性,耐久性の向上を狙ったと見られる。
メイン・ボードやWiiリモコンの基板は両面とも金メッキ仕上げを採用している。Wiiリモコンの基板上には十字キーなどの接点があるので金メッキするのは当然と言える。だが,「可動部のないメイン・ボードを金メッキ仕上げする理由が分からない」とある機器メーカーの技術者は首をかしげる。「シールド板と基板をあれほどがっちりビス止めするなら,基板とシールド板の接触抵抗の経年劣化は気にならないレベルのはず」。
ヌンチャクコントローラなどを接続するWiiリモコンのコネクタの外装も金メッキ仕上げである。だが,この部分はWiiリモコンのケースで隠れてしまうので,大半のユーザーは金メッキだとは気づかないだろう。一方,大半のユーザーが目にするであろうヌンチャクコントーラ側のコネクタは金メッキされていない。
コネクタ・メーカーの技術者は「シールドが主目的であるコネクタの外装部を金メッキしても電気的な差は出ない。あえてやるにしても,オスメスの両方を同じ仕上げにすべきなのだが…」と任天堂の意図をつかみかねる様子だ。この技術者によると,高級感を演出するといったデザイン的な要請を除くと,コネクタの外装部を金メッキする効果はあまりないという。Wiiリモコンのコネクタはケースに隠れてしまうので,デザイン的な理由は考えにくい。
安くなったとはいえ,やはり金メッキ仕上げはそれなりにコストがかかる。例えばコネクタに施した場合,一個あたり数円のオーダーで価格が上がるという。何の意図も無く採用したとは考えにくい。別の機器メーカーの技術者は,「あえて採用したのは,電磁雑音対策の経年劣化を気にしている証拠ではないか」と推測する。
【訂正】記事オンエア当初,最初の写真のキャプション中に「512Mビット NANDフラッシュ・メモリ」とありましたがこれは「512Mバイト(4Gビット)」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。