電池問題について語る,ソニー  コーポレート・エグゼクティブ SVPの原直史氏
電池問題について語る,ソニー コーポレート・エグゼクティブ SVPの原直史氏
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 ソニーは2006年10月19日に発表した「2006年度の連結業績見通し修正」の中で,ノート・パソコン用のLiイオン2次電池モジュールの回収および自主交換プログラムに関わる費用として,2006年度第2四半期に約510億円を引き当てることを公表した(Tech-On!の第1報はこちら)。

 同社は2006年8月に,米Dell Corp.や米Apple Computer,Inc.がノート・パソコン用の電池モジュールを回収することを発表した時点で,ソニーの費用負担は200億~300億円になるとしていた。その後,2006年9月16日に中国Lenovo社のノート・パソコンが発煙事故を起こしたことで,自主交換プログラムを実施することになり回収対象のモジュールが増えたという。ソニーによれば,回収対象は合計で960万モジュール。うち800万モジュールがパソコンに同梱されて出荷されたものである。

 第2四半期に引き当てる510億円は,電池モジュールの回収率を試算し,そこから費用を見積もったという。回収費用には,モジュールの交換費用だけでなく,消費者からの窓口であるコール・センター,運送代,廃棄費用などが含まれる。ただし,「東芝から損害賠償請求などに対するメモは来ているものの,訴訟に対する準備費用は含まれていない」(コーポレート・エグゼクティブ SVPの原直史氏)としている。仮にパソコン・メーカー各社が今後ソニーに対して損害賠償請求をしたとすると,対策費用がさらに膨らむ可能性がある。

 電池モジュールの発煙・発火の原因については,従来からの見解を変えていない。「電池セルの封入工程で,セル内に微細な金属粉が混入した。さらにパソコン側のシステム構成によって問題が起きる場合がある」(原直史氏)。ただし,米ロサンゼルス空港で発煙事故を起こしたLenovo社のパソコンについては,「搭載されていたモジュールは6本のセルを使っていたが,そのうち4本が紛失し,2本しか回収できなかった。いまだに原因は特定できていない。それでもユーザーの不安を解消するために,自主交換プログラムを実施することにした」(同)と説明する。

 ソニーは現在,電池モジュールの自主交換プログラムを進めるとともに,米国消費者製品安全委員会(CPSC:The U.S. Consumer Product Safety Commission)など各国政府機関,およびパソコン・メーカーと今後の対応について協議している。近々,同プログラムの詳細や,これまで明らかにしていない技術情報について説明会を設けるという。

 国内のある大手パソコン・メーカーによれば,「ソニーは米国でCPSC主導の回収プログラムを実施することになるだろう。具体的な回収スキームは,パソコン・メーカー各社に任されるようだが,CPSCが主導することで消費者からの問い合わせに対して各社の対応に大きな差が出ないようにできる」と話す。


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