ソニーは2006年10月19日,2006年度の連結業績の下方修正について記者会見を開いた。営業利益が2006年7月時点の見通しから800億円少ない500億円になると発表。このうち,発火事故により回収や交換を決定したノートパソコン(PC)向けリチウムイオン2次電池が,現時点で510億円の営業減益要因になると説明した。その後の質疑応答では,このリチウムイオン2次電池に関する質問が相次いだ。その詳細は以下の通り。なお,この電池の問題については,自主交換プログラムの全容と併せ,技術的な解析を説明する記者会見を同社は後日開くという。

──発火事故が起きたことに関して,品質管理の面で何が一番の問題だったのか。

当社が技術的に解析して判明していることは,製造工程の中で微細な金属粉が入ってしまったということ。これが第1要因と考えている。この第1要因に加えて,PC側のシステム構成によって,場合によって発火に至ると考えている。

──なぜ,金属粉が入ってしまったのか。品質管理の観点で説明して欲しい。

今回問題が発生したのは円筒型のリチウムイオン2次電池。こうした円筒側の場合は,外側(筐体)が金属の管でできており,その中に電池セルを詰めている。そのときの封入工程で金属粉が入ってしまった。そこで,現在は金属粉が入らないように製造工程を改善している。

──PC側のシステム構成側の原因について,もう少し具体的に説明して欲しい。

システム構成(側の原因)といってもさまざまなものが考えられる。充電方法やパック(電池セル)の設置場所,温度,回路設計などだ。

──発火事故が起きているのはノートPC向けのリチウムイオン2次電池というが,他の製品に影響はないのか。

PC以外の製品は,基本的にハード側の(システム)構成がPCとは異なっている。そのため,このような事態にはならないと想定している。

──自主回収を決めた経緯だが,「責任はない,事故も起きない,しかし,回収する」というソニーの説明では,使用上の顧客の安全性が本当に保証できるのか,はなはだ疑問だ。

当社は自主回収について責任がないと申し上げてはいない。自主回収を決めたきっかけは,ロサンゼルス空港におけるLenovo社製PCの発火事故だ。しかし,この事故については,使用されていた6本の電池セルのうち,4本が紛失しており,2本しか残っていない。従って,事故の解析を行ってはいるが,原因の特定が非常に困難であり,あるいは(原因の特定が)できないのではないかという状況だ。

このように,事故の原因が特定できないし,電池セルが(事故に)起因するかどうかも分からない状態ではあるが,ユーザーに不安を与えてしまったことは事実。これを低減あるいは払拭するには,当社が自主回収プログラムを策定して実行することが最善の策と考えた。

──「原因が特定できていない」ということは,製造工程で微細な金属粉が混入したことが発火事故の原因かどうかも分かっていないということか。

そうだ。

──それならば,新しく交換したものが「安全である」とは,はっきりと言えないのではないか。

交換するリチウムイオン2次電池は生産工程や設計等に改善を施したものだ。従って,安全度は高まっていると考えている。

──発火事故はもう起きないということか。

工業製品だから100%ないとは言えないと思うが,(従来よりも)はるかに安全度は高い。

──回収について対応や情報開示が遅れているのではないか。

米Dell社と米Apple Computer社の自主回収には速やかに対応した。Lenovo社のPCの事故が起きたときもいち早く自主交換プログラムの実行を決定した。しかし,実際にリチウムイオン2次電池を交換するのはPCメーカーであるため,当社がPCメーカーと調整したり,交換プログラムを円滑に進めるために,米国の消費者製品安全委員会と協議したりする必要がある。従って,交換プログラムを決定するまでに時間が掛かっている状況だ。決定次第,速やかに対応する。

──回収費用はPCメーカーの負担率はゼロで,ソニーが100%と見積もっているのか。

基本的にまだ子細が詰まっていないため,現時点では具体的に説明することはできない。しかし,かなりの部分は当社が負担することになると考えている。

──リチウムイオン2次電池の発火事故や,青紫色半導体レーザの生産調整など,ソニーにおいてエレクトロニクス事業におけるものづくりの現場でつまずきがあった。その点をどのように評価しているか。

リチウムイオン2次電池と青紫色半導体レーザとは全く別の次元の問題だ。リチウムイオン2次電池は,生産現場の製造工程の問題である。青紫色半導体レーザは,新しい技術への挑戦だ。歩留まりに少し問題があって生産調整したが,新しいものにチャレンジするときには,どうしてもスタート時点において歩留まりの低下は起こり得る。これは「産みの苦しみ」であり,やがては(高い歩留まりで)きちんと生産できると考えている。

──(発火事故に関して)トップを含めて関係者の処分についてはどう考えているのか。また,これほど大きな問題にもかかわらず,中鉢(良治)社長などトップが説明する機会がないが,何か理由があるのか。

トップはこの問題について真摯に取り組んでいる。現在のところは,自主交換プログラムをきっちりと遂行することが第1の責任と考えており,これに全力で取り組むという考えだ。現時点で(トップや関係者の)処分は決定も検討もしていない。

また,中鉢がこれまで会見や説明をしなかったことについてだが,何かを隠しているわけではない。先述のように,さまざまな調整に時間を要してしまった。その間,説明不足で誤解を招いてしまった。次回はその点も含めて記者会見する。その際には,事業責任者が出席して説明する。


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