「2005年に発売した『HDR-HC1』と,2006年3月に発売した『HDR-HC3』は,ビデオ・カメラ市場に大きなインパクトを与えたと自負している。HDTV対応テレビを見た人がSDTVに戻れなくなるように,一度ソニーのビデオ・カメラを使ってHDTVでの撮影を経験した人はSDTVでの撮影に戻れなくなる」(ソニー 執行役EVPデジタルイメージング事業本部長の中川裕氏)。
ソニーは,DVDやHDDなどのランダム・アクセス媒体にHDTV映像を記録できるビデオ・カメラの規格「AVCHD」に対応するデジタル・ビデオ・カメラ2機種を発売した(図1,図2,Tech-On!の関連記事1)。実売予想価格は,直径8cmのDVDを利用する「HDR-UX1」が約17万円,30Gバイトの1.8インチHDDを搭載する「HDR-SR1」が約18万円である。2006年9月10日に発売するUX1を最初の1カ月で3万台,同年10月10日に発売するSR1を最初の1カ月で2万台販売したいとする。
録画時の消費電力は約5W
UX1とSR1の開発に当たり,ソニーはビデオ・カメラ向けのMPEG-4 AVC/H.264(以下,H.264)コーデックLSIと,アプリケーション・プロセサを新たに開発した(図3)。H.264コーデックLSIは,画素数1440×1080で60フィールド/秒の映像を符号化/復号化できる。1080iの映像をH.264で符号化し,5.1チャネルの音声をドルビーデジタルで符号化したときのコーデックLSIの消費電力は約500mWである。
ビデオ・カメラ全体の消費電力は,UX1が5.0W,SR1が4.8Wである(いずれも液晶モニタをオフにして電子式ビュー・ファインダ(EVF)をオンにした場合)。「EVFがオフで液晶モニタがオンの状態に切り替えると,消費電力が0.2W程度増加する」(発表会場の説明員)。付属するLiイオン2次電池「NP-FM50」を使用した場合,ズーム操作や待機操作,電源のオン/オフを繰り返したときの実撮影時間は,UX1が50分,SR1が55分である。
レンズと撮像素子で構成する光学系は,HC3のものを流用した(図4,Tech-On!の関連記事2)。総画素数210万の「クリアビッドCMOSセンサー」を採用する。最大で400万画素の静止画を撮影できるほか,映像の撮影中に最大230画素の静止画を撮影できる。2枚のメイン基板のうち,H.264コーデックLSIやアプリケーション・プロセサを実装した1枚の基板は,UX1とSR1で同じものを採用した(図5,図6)。もう1枚の基板は,記録媒体への書き込みと読み出しを制御するものであり,別の基板を使っている。
HC3より奥行きが26mm増加
本体のみの外形寸法は,UX1が76×89×165mm3,SR1が78×84×165mm3(いずれも最大突起部を含む寸法)。82×78×139mm3(最大突起部を含まない外形寸法)であるHC3に比べ,奥行きが26mm長くなった。これには,消費電力の増加による発熱の影響を抑える狙いがあったようだ。メイン基板とDVD装置(またはHDD)との間に,放熱を目的とした銅板を大量に配置した(図7)。「消費電力を低減したHC3では放熱用の銅板を減らしたが,今回はHC1と同量くらいの銅板を配置した」(説明員)。メイン基板で発生した熱を左右に逃がす構造により,DVD装置やHDDに伝わる熱を抑えたという。3.5型の液晶モニタを採用したことも奥行きの増加に影響したとみられる。HC3は2.7型の液晶モニタを搭載する。