ソニーは,1080iのHDTV動画を撮影できるビデオ・カメラ「HDR-HC3」を2006年3月3日に発売する(ニュース・リリース)。特徴は,HDTV対応の同社従来機「HDR-HC1」と比べて本体の体積と重さを26%小さくしたこと。体積は490mm3,重さは500g(本体のみ)。「ビデオ・カメラとして一般的な大きさ,重さの目安である500mm3,500g以下を実現した」(同社)。同社の想定実売価格は約16万円。国内で月3万台の出荷を見込む。「HDR-HC3単独で国内出荷台数シェアの2割を取りたい」(同社)という。記録媒体はミニDVテープである。
今回の機種は,従来からのD端子やi.LINK端子に加えてHDMI端子を搭載したことも特徴。静止画の記録画素数は400万と,前機種の276万よりも多い。搭載したCMOSセンサの有効画素数は199万だが,信号処理LSIで画素補間を実行して記録画素数を増やす。用いた撮像素子は「クリアビッド CMOSセンサー」である(関連記事)。
小型化しても画質を変えず
ソニーが本体を小型化するために採った手段は大きく2つある。(1)レンズ・ユニットの小型化。レンズ口径は前機種の直径37mmから30mmになった。これによりテレ(望遠)側のF値が従来の2.1から2.9になり,レンズがやや暗くなったものの,CMOSセンサの感度を高めるなどして画質低下を回避したという。CMOSセンサの画素ピッチは2.9μm。前機種の2.5μmよりも広い(今回のCMOSセンサについての詳報)。
(2)画質補正用LSIを除く主なLSIの個数を,前機種の11個から3個に減らした上で,新たに開発した電源ICを用いてディスクリート(個別半導体)や受動部品を削減した。これにより,基板面積は前機種比4割減の約50cm2になった。基板枚数も3枚から1枚になっている。プリント配線基板は10層品である。
今回用いている3個のLSIは,解像度変換や音声符号化/復号化,入出力制御などを担うベースバンドLSIと,MPEG-2符号化/復号化LSI,DDR方式のDRAMである。ベースバンドLSIとMPEG-2符号化/復号化LSIは,設計ルールが90nm。駆動電圧は+1.0V。共に端子数は300程度である。電源ICは電流帰還型で,FETを内蔵している。
LSIを集約したことで,消費電力は5.9Wから4.4Wに減った。このため金属製の放熱部品が不要になった。前機種では4点,合計43.7g用いていたが,今回は2点,合計15.7gである。