これまでのLiイオン2次電池は正極にコバルト酸リチウム(LiCoO2),負極に炭素(C)材料であるグラファイトを使い,それぞれの極板を積み重ねた構造を採る。電解質を経由してLiイオンが正極と負極の間を行き来することで充電と放電を繰り返す。ノート・パソコンや携帯電話機,ビデオ・カメラなど幅広い用途で利用されている。

 Liイオン2次電池の単位体積当たりのエネルギー密度は,これまでの電極材料で増加させるのは難しくなってきた。電極材料をこれ以上詰め込むのは難しい上に,正極と負極を分離し電解質を保持する境界膜(セパレータ)の薄膜化も限界に近いためである。このため,新しい電極材料を採用しようという動きが活発になってきている。この際,現行のLiイオン2次電池の安全性や放電特性などを維持しながら,さらに大容量化を狙える材料探しが鍵になっている。例えば三洋電機は,正極材料を従来のLiCoO2から,LiCoO2とLi(Ni―Mn―Co)O2を混合した材料に変更することで,電池容量を同社の従来品に比べて10%高めた角型のLiイオン2次電池「UF553436T」の量産を2004年10月から開始している。

 負極材料であるグラファイト・カーボンについても,充放電サイクル寿命などの点で実用に耐える材料探しが本格化している。目標は,電極当たりの理論的な放電容量がグラファイト・カーボンの数倍の材料を使うことで,電池のエネルギー密度を高めることである。負極材料の候補となる物質は大きく3つある。Si系合金,Sn系合金,そして金属Liである。図に,この3つを代表例に利点と課題を示した。

Liイオン2次電池
図 負極材料の候補は大きく3つ
Liイオン2次電池の負極材料の候補となる材料は大きく3つある。Si系合金,Sn系合金,そして金属Liである。(2004年12月6日号より抜粋)