三洋電機が2005年11月18日,2005~2007年度を対象とする中期経営計画を発表した(図1,Tech-On!の関連記事1同2)。現在展開中の経営再建策(構造改革)である「SANYO EVOLUTION PROJECT」の方向に沿ったもので(同3),より具体的な施策を打ち出した。注目すべきは,同社がついに「総合家電メーカー」の看板を下ろし,電池や部品,業務用機器を中心とするメーカーに生まれ変わることだ(図2)。

図1◎2005~2007年度の中期経営計画を発表する三洋電機社長兼COOの井植敏雅氏。東京会場は大阪会場からの映像中継による記者発表となった。

図2◎三洋電機がついに「総合家電メーカー」の看板を下ろし,電池や部品,業務用機器のメーカーになる。

 現在同社が競争力を持つこれらの事業を「コア事業」として選択し,経営リソースを集中することで業績の回復を図る。既にそうした施策を始めている競合他社に比べて「周回遅れ」の感は否めないが,ようやく「選択と集中」の経営へと三洋電機も舵を切った。

薄型テレビ事業からの撤退が濃厚に


 これまで三洋電機が総合家電メーカーとして展開してきた事業を絞り込んでコア事業に集中する過程で,いわば「非コア事業」となったのは(1)AV機器事業,(2)白物家電事業,(3)半導体事業,(4)金融事業──の四つ。これらの事業は現在赤字,もしくは今後成長が見込めないと同社はとらえ,構造改革を進めていく方針だ。

 まず,(1)のAV事業では,テレビ事業の大規模な再編を図る。現在,同社はブラウン管テレビ受像機を中心に650万台を世界に分散した工場で生産している。これらを全て中国における一極生産に切り替え,原材料についても中国で集中購買する。既に中国には技術部門もあり,こうした中国シフトの準備は整っているという。

 一方で,日本市場のテレビ事業は「赤字が出るなら撤退する」(同社社長兼COOの井植敏雅氏)。現在,日本市場では市場がブラウン管テレビ受像機から薄型テレビ受像機へと急速に切り替わりつつあるが,「薄型テレビはパワーゲームの象徴であり,(競合他社に対して)三洋電機がまともにぶつかっていくことはしない」と井植氏は語った。

 この井植氏の発言からすると,三洋電機は薄型テレビ事業から撤退する可能性が高そうだ(図3)。同社の市場シェアは現在のところ低く,薄型テレビ事業では利益が出ていないとみる向きが多いからだ。

図3◎日本市場からの事業撤退が予想される三洋電機の薄型テレビ受像機