「私たちの世代で,世界のソニーを復活させたい」と語る中鉢氏
「私たちの世代で,世界のソニーを復活させたい」と語る中鉢氏
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 「現在のソニーが直面する業績不振は,ヒット商品の不在や商品企画のおごり,社内カンパニーにおける部分最適志向といった複合した原因で起こってしまった。私たちの世代で『世界のソニー』を復活させたい---」。ソニーは2005年9月22日に経営方針説明会を開催した(Tech-On! 関連記事1)。同社 代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏は,詰めかけた300人を超える報道関係者を前に,ソニーの再生に賭ける思いをこう語った。

2100億円を投じ構造改革

 同社では2007年度を目標年度とし,不採算事業の絞り込みや生産拠点の統廃合などを実施する。併せて今後の成長が見込める事業部門に対する開発投資の拡大などを計画している。構造改革に対しては,2007年度までに2100億円を投じる。

 構造改革によるコスト削減は2000億円を見込む。このうち事業の絞り込みによる効果は1300億円である。具体的には,(1)不採算部門や非主流部門など15の商品カテゴリーからの撤退(Tech-On! 関連記事2),(2)販売モデル数の20%削減,(3)製造拠点65カ所のうち11カ所の閉鎖,を実施する。残りの700億円は,本社および間接部門における事業の効率化によるものである。

 組織体制も変更する。エレクトロニクス事業では,社内カンパニー制度の廃止による組織の階層削減と事業本部の統廃合を実施する。ちなみに,同社が社内カンパニー制を導入したのは1994年4月のことだった。

 人員削減は1万人を予定している。内訳は,本社と間接部門で5000人,事業部門で5000人である。地域別では国内4000人,海外6000人だという。

Cellや液晶,有機ELには積極投資

 こうしたリストラを進める一方で,戦略部門への積極投資も進める。例えば家庭向けの据置型AV機器と携帯機器については,2006年度以降発売の商品について順次アーキテクチャの共通化を図る。さらにマイクロプロセサ「Cell」の搭載を進めることなどにより,プラットフォームの統一を図っていく方針だ。ディスプレイ関連では,新ブランド「BRAVIA」を投入し液晶テレビとリアプロの販売促進を図るほか(Tech-On! 関連記事3),将来に向けた研究開発としてテレビや携帯機器に向けた有機ELパネルの開発本部を新設する。

 設備投資は2006年度と2007年度の2年間で3400億円の予定。半導体と電子デバイスに集中的に投下する。半導体ではCellや携帯機器用LSIの開発投資が中心になる。電子デバイスではディスプレイ,撮像素子,Blu-ray Discなどの設備投資に振り向ける。2003年度~2005年度までの投資額5000億円の大半はゲーム機向けだったが「ゲーム事業へ投資は一段落。これまでのゲーム機向けの投資は基本的にゲーム事業だけで回収できると確信している」(中鉢氏)としている。

 ソニーでは一連の取り組みにより,2007年度に連結売上高8兆円,営業利益率5%を目指す。エレクトロニクス事業の営業利益率は4%を目標に掲げている。