デジタル録音・録画装置や記録媒体に「みなし著作権料」に相当する金額(賦課金)を上乗せしておき,のちにこれを著作権団体に再分配する制度。著作権法では,個人的に楽しむためであっても,政令で定められたデジタル方式の機器・媒体を用いた録音,録画については著作権者への補償金の支払いを義務づけている(著作権法30条2)。さらに,著作権法第104条で,その運用に関する制度上の枠組みが規定されている。デジタル録画については,1999年7月の工場出荷分から適用が始まった。デジタル録音の賦課金制度は,ミニディスク(MD)などを対象に1993年6月1日に運用が始まっている。
文化庁では,著作権法の見直しを進めており,その中の大きな議題として私的録音録画補償金制度が挙がっている(図)。私的録音補償金制度の利害関係者には,日本レコード協会(RIAJ)と日本音楽著作権協会(JASRAC)などの権利者団体と,電子情報技術産業協会(JEITA)や日本記録メディア工業会などのメーカー側団体がある。メーカー側は,著作権保護技術の進展に合わせて私的録音補償金の撤廃,規模縮小を求める。「問題は補償金を賦課すること自体ではなく,その手法にある。インターネットなどを介した著作権保護技術で守られたコンテンツ配信が増えていることを踏まえ,将来的にはユーザーに平等かつ合理的と納得してもらえる手法が必要と考える」と主張する。一方の権利者側は,「iPod」に代表されるハード・ディスク装置(HDD)内蔵型オーディオ機器を補償金の対象に含めることを求めている。
権利者側とメーカー側の間で調整の難航が予想される項目としては,例えば算定方法や対象機器の変更が挙げられる。権利者側はパソコンやデータ用CD-R/-RWなどの汎用機器,汎用メディアにも新たに補償金を賦課することなどを求める
図 私的録音補償金の制度改革に向けた関係団体の要望
(2005年1月31日号より抜粋)