2009年4月1日に予定されていた「Blu-ray課金」の実施が遅れている。 Blu-ray課金は,2008年7月の「ダビング10」導入に絡んで決まった政策である。だがこの政策は,発表後9カ月以上たった2009年4月になっても,実施のめどが立っていない。ダビング10延期の原因にもなった権利者と機器メーカーの意見対立を,担当省庁の文化庁と経産省が調整できなかったからだ。Blu-ray課金の延期は,私的録音録画補償金制度を巡る両者の対立が,もはや調整不可能な段階まで激化したことを示している。

Blu-ray課金の発端となった玉虫色の「大臣合意」文書

 「権利者はね,今,本気で怒っているんですよ。なぜこの危機感が,機器メーカーの方に伝わらないのか。なぜわざわざけんかを売るようなことをするのか。理解に苦しむ」─。

 いわゆる権利者(著作権団体)に近いある関係者は,怒りを露わにする。

 文化庁は2009年3月末,同年4月1日の実施を予定していた「Blu-ray課金」に向けた政令改正を延期した。文化庁は同年2月2日に著作権法施行令の改正案を公表して,施行の準備を進めていた。土壇場で実施を断念した表向きの理由は「年度末で内閣法制局の業務が逼迫しており,政令案の審査を後回しにされた」(文化庁 著作権課 長官官房著作権課著作物流通室長の川瀬真氏)こと。文化庁は,内閣法制局の業務に余裕が出る4月中には実施すると説明する。だが4月に入っても,この政令改正を実施するめどは全く立っていない。

9カ月も実施を先送り

 Blu-ray課金は,Blu-ray Disc(BD)録画機とその記録媒体を,私的録音録画補償金制度の対象機器に加える政策を指す。2008年6月17日に突如,当時の文部科学大臣と経済産業大臣の「大臣合意」として実施が発表された。両大臣これを,「ダビング10」を開始するための「環境整備の一環」と説明した。ダビング 10は,地デジの普及促進を狙った録画機向けの新しい著作権保護ルール。北京五輪商戦を直前に控えた当時,実施が難航していた。

『日経エレクトロニクス』2009年4月20日号より一部掲載

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