透明な電子回路でガラスが「働き出す」

第1部<透ける利点>
透明トランジスタが
新しい電子機器を牽引へ

 この2~3年という短い間に「透明エレクトロニクス」の研究開発が急伸している。透明なトランジスタが低コストで容易に作製できるようになってきたためだ。その性能も,既存の薄膜トランジスタ(TFT)を凌駕する勢いで伸びている。全く新しいエレクトロニクス機器の開発だけでなく,既存の電子機器の性能やコストの改善も見込める。開発を牽引してきた日本の大学にとどまらず,いまや世界中のメーカーの熱い視線を浴び始めた。

第2部<実用間近>
まずは次世代電子ペーパーから
透明TFT で高精細を実現

 透明な酸化物半導体を使ったTFTは,パネル・メーカーにも評価が高い。数年以内に,電子ペーパー有機ELパネルで実用化が始まりそうだ。透明という特徴を,高精細パネルにつなげるアイデアも登場した。透明TFTがさまざまな新しい製品の登場を支える。材料面では,a-IGZOとZnOの2種類の透明酸化物半導体がしのぎを削っている。現時点では後発のa-IGZOが,ZnOをややリードしている。

第3部<次への布石>
p型が開く新しい扉
多結晶Siの代替も視野に

 透明エレクトロニクスが大きく広がるには,現在のn型の透明半導体だけでなくp型の透明半導体の性能向上が不可欠となる。実現すれば太陽電池やLED,各種CMOS回路などを透明にできる。ブレークスルーの先には,ディスプレイを超えた見えない電子回路が至る所に使われる新しい世界が待ち構えている。