紙のような感覚で利用できる薄型のディスプレイ。いったん画像を表示させたあとは各画素に電圧をかけなくても長期間同じ画像を表示し続けるディスプレイを指す場合が多い。商品への応用は既に始まっており,2004年2月に発売した松下電器産業の読書用端末「ΣBook」,同4月に発売したソニーの読書端末「LIBRIe (リブリエ)」,2005年度中にセイコーエプソンらが発売を予定する腕時計(Tech-On!関連記事)などがある。

 電子ペーパーの実現手段については,パネル内に封止した色のついた粒子を電界によって移動させることで表示する電気泳動型によるものが多い。例えば,それぞれ逆の極性に帯電させた黒色(カーボン・ブラック)と白色(酸化チタン:TiO2)の粒子を電界によって上下させて白黒表示を行う。電圧の印加を止めると粒子の動きも停止し,そのままの状態を保つことができ,消費電力を低く抑えることが可能となる。

 E Ink社と凸版印刷の開発した方法では,黒色と白色の粒子を内部に持つマイクロカプセルをプラスチック基板にコーティングした前面板を,TFTガラス基板(背面板)と張り合わせてディスプレイを作る(図)。前面板の透明電極とTFTの間の電圧(電位差)によって,マイクロカプセル内に封入した粒子の位置を制御する。

 このほか,ブリヂストンは「電子粉流体」を利用して,動画表示可能な電子ペーパーを開発している。松下電器産業のΣBookは,米Kent Display Systems Inc.の技術をベースにするもので,コレステリック液晶の選択反射の仕組みを利用する。

米E Ink Corp.と凸版印刷が開発する表示デバイスの断面構造
図 米E Ink Corp.と凸版印刷が開発する表示デバイスの断面構造
2003年7月21日号より抜粋