日経エレクトロニクス2011年11月14日号で「スマホ部品で勝つ」と題した特集を大下記者と共に執筆しました。情報通信端末の主流が、従来の携帯電話機(フィーチャーフォン)からスマートフォンに大きく変わろうとしていることが、そうした端末に向けて電子部品を供給しているメーカーの勢力図にどのような影響を与えているかをまとめた特集です。

 この特集の取材を通して感じたのは、やはり米Apple社の「iPhone」という存在の巨大さです。iPhoneは、全世界で累計1億台以上が販売されており、2011年10月14日に発売された新製品「iPhone 4S」に至っては、マイナーチェンジであるにもかかわらず、発売後わずか3日間で400万台以上も売れました。まさにお化け商品です。スマートフォン向け部品を手掛けるメーカーにとって、iPhoneに採用されるかどうかは、そのメーカーの業績を左右する大問題になっています。

 みなさんご存じのように、iPhoneの生みの親ともいえるSteve Jobs氏は2011年10月5日に亡くなりました(Tech-On!の関連記事)。その前日に発表されたiPhone 4Sは、Jobs氏の生前に発表された最後のiPhoneになりました。

 このiPhone 4Sの目玉が、音声アシスタント「Siri」です。人に普通に話すようにiPhoneに話しかけると、iPhoneが適切な返事を返してくれるという機能です。現在は日本語には対応していませんが、Apple社は2012年には日本語でも使えるようにすると約束しています。

 Siriを見て、Apple社(当時のApple Computer社)が1987年に発表したコンセプト「ナレッジ・ナビゲーター」を思い浮かべた人も多いのではないでしょうか(英語版Wikipediaの「Knowledge Navigator」の項)。人工知能を備え、人が話しかけることで、適切な回答を膨大なデータベースの中から探しだしてくれる秘書のような端末のコンセプトです。このコンセプトを発表したのは、Jobs氏をApple社から追放した当時の同社CEOであるJohn Sculley氏であり、Jobs氏ではありません。しかし、iPhoneの進化の方向は、まさにナレッジ・ナビゲーターを向いています。

まだまだ未熟なジェスチャー入力

 デジタル家電に関連した技術で、現在最もホットなのは、ユーザー・インタフェース(UI)関連の技術でしょう。iPhoneは、マルチタッチ操作というそれまであまり使われていなかった新しい操作法を導入することで、大ブレークしました。さらに、Siriで音声入力も強化しています。