なお,Samsung社はNAND型フラッシュ・メモリでも,開発した東芝から技術供与を受けた後に積極的に投資し,DRAMと同様に世界ナンバー・ワンのシェアを獲得。技術を与えた東芝はSamsung社の後塵を拝している。

市場をつくる企業が勝つ

 半導体全体の売上高トップも,1991年から1992年にかけてNECから米Intel社に変わった(表2)。DRAMメーカーがDRAM市場の拡大に能動的ではなかったのと違って,同社は自ら積極的にパソコンとマイクロプロセサの市場を広げていった。当時Intel社はPCIバスや画像の圧縮・伸長,メモリ・カードのインタフェース,電話や無線,ケーブルテレビなどとのネットワーク接続といった規格の策定・標準化に積極的にかかわっていた。


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 これらの規格の策定作業には人手がかかるし,Intel社が直接的な売り上げ増を見込めるわけでもない。それでも積極的に標準化を進めたのは,パソコンの市場拡大を通してマイクロプロセサの販売を増やそうとしたからだ。

 表2の2005年のランキングを見ると,半導体メーカーの上位にIntel社とSamsung社以下,欧米のメーカーが多数続く。1991年と比べると日本メーカーの衰退は見るに忍びないほどだ。これはインターネット関連技術などが欧米から続々提案され,パソコンや携帯電話,テレビの伝送方式などの標準化で欧米企業が主導権を握ってきたためである。

 半導体やエレクトロニクスの事業戦略を立てて素直に実行する,市場を広げられるような基盤をつくる――そのような信念と執念を持った欧米そして韓国企業が2005年のトップ10に残っている。今後,日本のどの企業がこのランキングの中に記載されることになるのだろうか。

安保 秀雄