半導体市場の追い風受け伸びゆく日本企業

日経エレクトロニクス表紙

 この年,世間の話題をさらったのは7~8月開催のロサンゼルス・オリンピック。英国の作家George Orwellが著書『1984年』で予言した管理社会はまだ訪れておらず,8月27日号に「過去最高の業績に向かって疾走する半導体市場」と題する記事を掲載するなど,エレクトロニクス産業は好況期にあった。日本の半導体生産も,この年非常に大きく伸びた。

 1984年に最も多くの読者に読まれた記事は,9月10日号の「商品化された液晶ポケット・カラー・テレビ」。諏訪精工舎(現・セイコーエプソン)が8月に商品化した小型液晶テレビの技術を紹介した論文である。多結晶Si TFTとカラー・フィルタを利用した,38.4mm×28.6mmの液晶パネルを使っていた。画素数は240×200だった。

 読者の評価が最も高かったのは,6月18日号の「発表が相次ぐ3~3.5インチを中心にフロッピー・ディスク装置を総ざらいする」。当時主流だった5.25インチ型の後継を狙い各社が投入した小型の装置を比較した。この記事も示唆したように,大容量化に向く3.5インチ型が優勢になり,後に業界標準の座に就く。

1984年に読まれた記事 BEST 3
  1. 商品化された液晶ポケット・カラー・テレビ(9月10日号)
  2. 海外技術速報(1月30日号)
  3. 産業ニュース・ダイジェスト(8月27日号)
1984年に評価が高かった記事 BEST 3
  1. 発表が相次ぐ3~3.5インチを中心にフロッピー・ディスク装置を総ざらいする(6月18日号)
  2. ICパッケージに帯電した静電気がICを破壊(4月23日号)
  3. 汎用機並みの機能・性能を目指す32ビット・,マイクロプロセサ(9月24日号)

「読まれた記事」「評価が高かった記事」は読者アンケートの結果による

本記事は,2006年7月に発行した日経エレクトロニクス創刊35周年特別編集版「電子産業35年の軌跡」から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります

―― 【次回】1985年:32ビット・マイクロプロセサ ――