1985年に米Intel社は,同社初の32ビット・マイクロプロセサ「80386」を発売した。

図1 米Motorola社の「MC68020」 本誌1984年9月24日号より。
図1 米Motorola社の「MC68020」 本誌1984年9月24日号より。 (画像のクリックで拡大)

 1980年代に入り32ビット・マイクロプロセサが登場し,本格的なコンピューティング・パワーを個人レベルのものとする道筋をつけた。世界初のマイクロプロセサである米Intel社の4ビット・プロセサ「4004」が登場した1971年から,8ビット,16ビットの時代を経て10年余りがたっていた。

 1981年のISSCC(International Solid-State Circuit Conference)でシステム・メーカーの内製品を含めた32ビット・マイクロプロセサの開発発表が相次いだが,半導体メーカーから汎用品の出荷が始まったのは1983年以降であった。1983年に米National Semiconductor社が「NS32032」のサンプル出荷を始めて先陣を切り,翌年には米Motorola社が「MC68020」で続いた(図1)。

 Intel社は1985年に満を持して「80386」を市場に投入した(図2)。16ビット・プロセサ「80286」との上位互換性を保っている。米Zilog社,英Inmos社なども相次いで参入した。

図2 米Intel社の「80386」 本誌1985年11月4日号より。
図2 米Intel社の「80386」 本誌1985年11月4日号より。 (画像のクリックで拡大)

 日本の半導体メーカーでは,それまでIntel社のセカンド・ソースとしての色彩が強かったNECが独自路線を歩み始めた。独自アーキテクチャの「V60/V70」を開発し,参入した。他の日本メーカーの多くはノイマン型プロセサの集大成を目指すTRONチップの陣営へ加わった。

 世界中の有力半導体メーカーが各種の32ビット・チップを市場投入したが,Intel社とMotorola社の2強対決の様相が色濃かった。両社は16ビット時代までと異なり,セカンド・ソースのライセンスを他社に与えることはなく,他社は独自開発を迫られたともいえる。

 当時,各社が盛大な製品発表会やセミナーを開催したが,どれも大盛況だったことが思い出される。半導体各社の力の入れようと,ユーザーであるシステム・メーカーの大きな期待が表れていたように思う。