EUがデジタル情報インフラと産業データ連携の仕組みづくりを加速させている。その先行事例が2023年8月17日に発効した電池規則である。電池規則は、蓄電池のサプライチェーンに対して地球環境問題関連の規則を定めただけでなく、EUのデジタル情報インフラ構築と運用の先行事例となりそうだ。そこで今回は、EUの産業データ連携の仕組みである「Gaia-X」やその配下の「Catena-X」と電池規則の関係性を解説する。

(出所:123RF)
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 EUは蓄電池産業をめぐるグローバル競争を勝ち抜くべく、2023年8月に「電池規則(Regulation(EU)2023/1542)」を発効した。その主な特徴は前回記事で解説した通りだ。

 電池規則は蓄電池が環境に与える悪影響を防止・低減することを主な目標に掲げているため、蓄電池のサプライチェーン全体で環境・社会的問題に対応するための要件が含まれている。その一例が、カーボンフットプリントや責任ある調達に関する要件だ。

 電池規則のもう1つの大きな側面は、デジタル情報インフラで蓄電池に関する情報を管理することだ。蓄電池個体ごとに作られる電子的記録である「バッテリーパスポート」に、カーボンフットプリントなどサプライチェーンの情報を含む蓄電池情報を格納。サプライチェーン上の事業者、ユーザー、規制当局などの関係者が必要に応じてアクセスできるようにする計画だ。EUは産業横断的にデジタル情報インフラの構築を進めており、バッテリーパスポートはその一部である。

 バッテリーパスポートは、「サーキュラーエコノミー行動計画」下の個別規則である「エコデザイン規則」が定めるデジタル・プロダクト・パスポート(DPP)の概念に合致する。DPPは蓄電池だけでなく、電子製品、包装容器、プラスチック製品などへの適用も提案されている。

 EUはDPPを実装するために、産業横断的なデータ連携の仕組みを検討するプロジェクト「Gaia-X」を推進している。さらにGaia-Xの原則の下に、様々な分野のデータ連携を進めようとしており、その1つが自動車サプライチェーンに特化した「Catena-X」だ。

 バッテリーパスポートは、欧州が他国に先んじてデジタル情報インフラを構築し、様々なデータを獲得しようとする動きの1つであり、先行事例というわけだ。電池規則に関するデジタル情報インフラ関連の組織・プロジェクトを図1に示す。前述のGaia-X・Catena-Xの他、バッテリーパスポートの実証実験を行う組織もある。

電池規則と関連してデジタル情報インフラのプロジェクトが進行中
電池規則と関連してデジタル情報インフラのプロジェクトが進行中
図1●電池規則とEUのデジタル情報インフラ関連の組織・プロジェクト(出所:各種資料を基に著者作成)

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