2022年1月に始まったガソリン補助金が予定通りであれば9月末に終了します。ここまでの予算総額6兆2000億円。この補助金、今後も続けるべきなのでしょうか。

ガソリン補助金の減額もあり、小売価格は13週連続で上昇している
ガソリン補助金の減額もあり、小売価格は13週連続で上昇している

 ガソリン価格が上昇しています。経済産業省が8月16日に発表したレギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットル当たり181円90銭で13週連続の値上がりに。1990年に統計が始まって以降の最高値である185円10銭も見えてきました。

 ガソリン価格が変動する主な理由は、原油価格と為替です。これに、現在は2022年1月から実施しているガソリン補助金が加わります。

 原油はグローバルで取引される商品で、需給によって価格が変動します。世界経済が加速すれば需要が増し、減速すれば需要が減ります。また、産油国の集まりである石油輸出国機構(OPEC)と非加盟のロシアなど主要産油国でつくる「OPECプラス」が原油の生産量を増産するか、減産するのかによって供給量が変動します。

 原油価格は新型コロナウイルスの感染拡大による全世界的な経済減速で下落しました。2021年後半にはコロナからの経済回復で需要が増加するも、OPECプラスが減産を維持したことで原油価格は上昇しました。

 また、日本は原油のほぼ全てを中東などの産油国から輸入しているため、為替の影響も大きく受けます。ここのところFRB(米国連邦準備制度理事会)によるインフレ抑制を目的とした金利の引き上げが続いたことで、円安が進行しています。原油価格の高騰とあいまって、原油の輸入価格は上昇しました。

 こうした状況下の2022年1月、政府は物価上昇対策として、ガソリン補助金の導入を決めたのです。

ガソリン価格が170円になるよう補助額を調整してきた

 ガソリン補助金の正式名称は「燃料油価格激変緩和補助金」です。ガソリンだけでなく、軽油や灯油、航空機燃料も対象です。この補助金の仕組みは、全国平均のガソリン価格が1リッター当たり約170円を超えるときに、5円を上限に石油元売り会社に補助金を支給するという枠組みでスタートしました。

 ところが、補助金がスタートした翌月の2022年2月に、ロシアがウクライナに侵攻。ロシアは資源国で、天然ガスは輸入量の4割、石油は2割を占める存在です。ロシアからの資源輸出量が減少したり、供給が途絶する懸念が高まり、原油価格は一気に高騰したのです。

 ガソリン価格を170円にとどめるには、補助金額を増やしていかざるを得ませんでした。そこで、2022年3月に補助上限を1リッター当たり25円に増額。翌4月にはさらに35円に増額し、それでも170円を超える場合は、超過分の2分の1を支援といった措置を講じました。補助金額の最高値は、2022年6月の41.9円です。補助金がなければ1リッター当たり215.8円になるところを、補助金で173.9円にまで圧縮したのです。

2022年6月には1リッター当たり41.9円を補助
2022年6月には1リッター当たり41.9円を補助
レギュラーガソリンの全国平均価格とガソリン補助金額の推移(出所:経済産業省)

 原油価格は2022年の初夏頃から上がったり下がったりしつつも、少しずつ低下し、2022年末にはウクライナ侵攻前の水準に戻りました。これを受けて政府は、今年1月から補助金の上限額を徐々に下げ始めました。

 当初からガソリン補助金は時限的なもので今年9月末に終了する方針だったため、6月からは終了に向けて2週間ごとに上限価格を切り下げています。

 そんな中、7月に1年半ぶりに原油価格が大幅に上昇したのです。既に補助金額の上限は下がっているため、170円前後に抑えられていたガソリン価格は上昇。「急激に高くなった」と消費者が感じる状況になったのです。

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