東日本大震災から13年が経過し、原子力への世論に少し変化が出てきました。再稼働を容認する意見が増えてきたのです。その背景には昨今の電気料金の上昇がありそうですが、再稼働によって料金低減が図れるのは西日本だけ。東日本は焼け石に水というのが現実です。そろそろ、原発を取り巻く”現実”を直視するべき時期ではないでしょうか。

(出所:123RF)
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 今年も3月11日を迎えました。巨大津波が東北沿岸部を襲い、1万5900人もの方々が命を落とされた東日本大震災の発生から13年。そして、東京電力・福島第1原子力発電所事故からも13年の歳月が経過しました。

 日本のエネルギービジネスにとって、3.11は大きな転換点となりました。原発事故によって再生可能エネルギーへのニーズや、大手電力にすべてを任せることへの不安が生じたことで、2012年の「固定価格買取制度(FIT)」と2016年の「電力小売り全面自由化」という、2つの大きな政策が実現したからです。

 この2つの政策によって、発電事業と小売事業に新規参入の扉が開かれました。大手電力が長らく独占してきた電力ビジネスに、様々なプレーヤーが参入できるようになったわけです。

 震災の記憶は時間の経過とともに、少しずつ薄れていきます。ですが、エネルギービジネスにかかわる以上、地震と津波によって家族を失った方々、そして原発事故で故郷を離れざるを得なかった方々の悲しみ、無念さがあって今があることを、忘れてはいけないと思うのです。

 13年経っても変わらないのは、日本の原子力政策です。岸田首相は原発の新増設に言及し、「原子力政策を転換した」と言われます。ですが、依然として原発のすべては民間企業である電力会社任せで、国がリーダーシップを発揮するような変化は見られません。その証に、13年経った今なお、東日本では原発は1基も再稼働していません。

 一方、世論調査の結果などを見ていると、原発の再稼働に関する国民の意識は、少しずつ変わってきているようです。

 朝日新聞が2月に公表した世論調査結果では、「原発再稼働賛成」が50%、「反対」の35%を大きく上回りました。この調査は2013年から毎年行われており、2013年は反対が58%、賛成が28%と真逆の結果でした。2020年頃から徐々に反対が減少、賛成が増加し始め、2023年に初めて賛成が反対を上回りました。

 こうした世論の変化の背景には、近年の電気料金上昇があるのでしょう。「原子力が再稼働すれば電気料金が下がる」という認識が広がっていると感じます。

 ただ、残念ながら今後、原発の再稼働が進んでも電気料金の低減効果は大きくありません。再稼働さえすれば電気料金が安くなるというのは、幻想だと言わざるをえません。

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