グループ全体で電力契約を一本化
電力調達改革の柱は大きく2つ。1つは、電力の契約を事業会社単位ではなく、グループ全体で電力会社のエリア単位での調達に集約したことです。
グループ全体で契約を束ねることが必ずしもコストダウンにつながるとは限りませんが、この会社の場合は電力会社間の競争が激化していたタイミングであったことも功を奏し、積極的な提案を引き出すことができました。電力会社とコミュニケーションを重ね、どういう条件であれば良い提案を出してもらえるのか、ヒアリングしながら詰めていったこともプラスに働きました。
もう1つの柱は、既存の業務プロセスの見直しによって、電気料金の削減が可能になる方法はないのか検討したことにあります。
電力調達改革に取り組むに当たり、各事業所の電力の使用状況を調べたところ、夏場の昼間など電気料金単価が高い時間帯では、操業すればするほど赤字になる状態に陥っていることが分かったのです。そこで、夏の昼間は生産量を減らし、夜間に生産をシフトさせることにしました。
結果として、年間の電気料金は3~4%、金額にして6億~8億円の削減につながりました。「電気料金は切り込む余地のないコストだと思い込んでいましたが、やればできるんですね」と、調達チームのメンバーは笑顔で話してくれました。
A社の電力調達改革には3つポイントがあります。最大のポイントは、トップダウンで調達チームに権限を付与したことで、生産現場でバラバラだった電力調達を全社横断で行ったことでしょう。2つ目のポイントは、常識に捕らわれず、電力会社に素直に相談し、コスト削減方法を含めて電力の調達方法についてアドバイスを仰いだことです。
3つ目のポイントは、各拠点の電力の使用実態を把握し、料金の見直しに留まらず、業務プロセスに踏み込んだことがあります。電気料金を安くしようと思えば、各拠点でどんな電力の使い方をしているのか、おのずと確認することになります。このプロセスで思わぬムダを見つけることができるのです。
A社はその後も調達専門チームが継続的に電力調達に取り組み、さらなるコスト削減を実現させています。
「同業他社の電気料金も大体知っていますが、うちはめちゃくちゃ安いですよ」。そう自信を持って言えるほど、A社には確かな知識とノウハウが根付いています。