2016年4月の電力全面自由化の際に東京電力パワーグリッドが起こした大規模なシステム障害を振り返る第2弾。大手電力の送配電部門は、すべての需要家に関わる業務を担っているため、ひとたびシステム障害が発生すると広範囲に影響が出る。
現在、九州電力が2020年4月に控える発送電分離に向けたシステム刷新で引き起こした大規模トラブルの渦中にいる。その影響を読み解くにあたり、東電PGの事例は参考になる点が多い
(第1弾の「【東電システム障害2016】電気料金の請求遅れ、新電力から悲鳴」もご参照ください)。
(日経エネルギーNext 2016年8月号 pp.6-7を再掲しました。記事中の人物の所属や肩書き、製品・サービス・企業の名称は記事掲載当時のものです)
「お客さんも頭では理解してくれている。ただ、時間の経過とともに、やり場のない怒りの矛先が向かってきている」。ある小売電気事業者(新電力)幹部は嘆息する。
東京電力パワーグリッド(PG)のトラブルによる電気料金の請求遅れ問題は、(2016年)4月上旬の発生から3カ月以上が経過し、関係者の疲労はピークに達している。
小売電気事業者は毎月、需要家ごとに集計した使用電力量の確定値を一般送配電事業者から受け取る。この確定値を基に電気料金を計算し、顧客に請求する。ところが、東電PGからの通知が遅れている。
確定使用量の通知は、託送業務システムで行う。東電PGは全面自由化に合わせて託送業務システムを刷新。4月以降にスイッチングした低圧の需要家は、新システムで管理している。また、4月以前に新電力に離脱した高圧・特別高圧の需要家と、太陽光などの発電事業者の発電量の管理も、4月のタイミングで新システムに移した。
通知遅延の原因は、既報の通り、従来の電力メーターからスマートメーターへの切り替え作業に端を発する(「【東電システム障害2016】電気料金の請求遅れ、新電力から悲鳴」参照))。いずれも新託送業務システムの範ちゅうだ。従来からの低圧の規制料金を利用する顧客は、旧託送業務システムで管理しているため、通知遅延は起きていない。
経産省は東電PGに自由化後、初の改善勧告
遅延が始まった4月は件数が少なかったため、騒ぎにはならなかった。ただ、4月分の使用電力量を計測する5月の検針日以降、件数が急増。5月20日時点で、2万3282件に上った。新託送業務システムで管理する全需要家の5.6%に通知遅延が発生した。
その後、東電PGの必死の対応が続き、徐々に遅延率は低下している。6月28日時点では遅延率は1.2%まで低下した。ただ、スイッチング件数が増加し続けているため、依然として発生件数は2万798件もある。
「東電PGの報告書を読むと改善していると書かれている。ただ、肌感覚としては5月以降、全く変わっていない」と、小売電気事業者各社が口を揃えるのは、こうした事情からだろう。
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