2022年も残すところわずか。今年は梅雨明けからの猛暑、そして豪雨に見舞われました。9月には非常に強い勢力の台風14号が九州に襲来。気象庁は沖縄県以外で初めて「特別警報」を発令しました。そこで今回は、地球上で最も激しい気象現象といわれる「台風」が温暖化でどう変わるのか解説します。

(出所:123RF)
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 今から4年前の2018年に襲来した台風21号は、25年ぶりに最大風速44m/s以上の「非常に強い勢力」で日本に上陸しました(徳島県に上陸後、兵庫県に再上陸)。近畿地方を中心に暴風が吹き荒れ、建物の屋根が飛ばされ、ビルの壁面が剥がされました。船やトラックの横転、大規模な停電など甚大な被害が発生し、映画さながらの光景に衝撃を受けた方も多かったのではないでしょうか。

 今年9月には、再び非常に強い勢力の台風14号が鹿児島県に上陸。気象庁は鹿児島県と宮崎県に、重大な危険が差し迫った異常事態を知らせる「特別警報」を発表しました。台風を要因とする特別警報の発表は、沖縄県以外では初めてのことです。

 「近年、強い台風が増えている」と感じている方がいるかもしれません。では、地球温暖化の影響で今後、日本に接近する台風はどう変わるのでしょう。

 世界の平均気温は、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、上昇ペースは100年当たり0.73℃。では、工業化以前(1850~1900年)と比べて世界の平均気温が2℃上昇した場合、台風はどう変化するのでしょうか。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2021年に公表した第6次評価報告書で世界各国の研究機関が行ったシミュレーション結果を以下の通り発表しました。

  • 台風の発生数は減少する
  • 勢力の強い台風が増加する
  • 台風による平均降水量は増加する
(出所:IPCC AR6 Full report Chapter 11, 台風(tropical cyclone)の記述はp.78~79

 この報告書によると、地球温暖化が進むと、台風の発生数は減少するが、発生すれば現在より発達して強い勢力となり、大雨を降らせるリスクが大きくなります。強い台風の増加は想像できたとしても、台風の発生数が減少するという結果は意外に思うかもしれません。この理由を理解するために、まずは基礎知識として台風発生のメカニズムを解説します。

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