欧州委員会が提案した電力市場改革案が、ほぼ原案通りに欧州議会と欧州理事会に了承された。電力市場が整備されて20余年を経ての大改革だが、ポイントは長期取引の積極的な導入だ。それにより、再生可能エネルギーに導入促進と電気料金の安定、そして長期契約のリスクを引き受ける企業(オフテーカー)のリスク低減 を同時に実現する。その核心となるのが「上下限付き双方向CfD」の加盟国への導入義務化とPPA(電力購入契約)の推進だ。

(出所:123RF)
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 新型コロナウイルスのパンデミックからの回復やロシアのウクライナ侵攻によって、2021~2022年の世界の燃料価格は高騰した。それに引きずられるように電気料金も大幅に上昇した。天然ガス調達をロシアに依存していた欧州諸国への影響は大きく、卸電力価格の月間平均価格が500ユーロ/MWh(約75円/kWh)に達する卸電力価格の暴騰が発生し、社会問題化した(図1)。

欧州ではロシアによるウクライナ侵攻などを背景に卸電力価格が暴騰した
欧州ではロシアによるウクライナ侵攻などを背景に卸電力価格が暴騰した
図1●欧州の卸電力市場価格の推移(月平均、ユーロ/MWh)(出所:ENTSO-eのデータを基に英エネルギーシンクタンクのEMBER作成)

 燃料価格、特にガス価格が電気料金の高騰を招いたことで、EU(欧州連合)は燃料を必要としない再エネへのシフトを加速させた。ウクライナ侵攻から2週間も経たないうちに欧州委員会はロシア産化石燃料からの脱却計画「REPowerEU」の概要を示し、3カ月後には詳細版となる「REPowerEU-Plan」を発表。再エネの導入目標を大きく引き上げたのである。

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