米国で断トツに電力需要が多く、今なお驚異的なペースで伸び続けているのがテキサス州だ。今夏は記録的猛暑と相まって昨年の最大需要を大幅に更新したが、問題なく乗り切った。2021年2月の大規模停電の記憶が残る中でも、再生可能エネルギー比率を高め、ありとあらゆる手段を講じて安定供給を維持するテキサス州の電力システムは注目に値する。
 今回は最近のテキサス州の電力情勢をISO(独立系統運用者)のERCOTの取り組みを含めて解説する。

(出所:123RF)
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 テキサス州は、米国で最も勢いのある州だ。人口・経済は全州の中で2位、化石燃料の生産量1位、電力需要に至っては断トツの1位だ。トヨタに次いで米テスラが本社を移転し、データセンターが次々とテキサス州に建設されている。

 電力需要を押し上げる最大の要因は人口だ。テキサス州の人口は、長きに著しい増加を続けている(図1)。2000年に約2090万人だった人口は、2022年までの22年間で約900万人増加し、約3000万人に到達した。年間平均で約42万人増加している計算だ。人口はカリフォルニア州に次いで第2位であるが、2000年は同州の3分の2、2022年には4分の3に迫っており、2030年には追い越す見込みだ。

2030年には全米最大人口の州になる
2030年には全米最大人口の州になる
図1●急増するテキサス州の人口(出所:US Census Bureauのデータを基に著者加筆)

 全米平均と比べても、同州の増加は際立っている。22年間の人口増加率は全米対比で約2倍を記録しており、特にこの2年間は両者の乖離が大きくなっている。最近の増加はフロリダ州に及ばないが、フロリダ州の増加がほぼ国内移転であるのに対し、テキサス州は自然増49%、国内移転29%、国外からの移住23%とバランスが良い。

 人口増は経済成長と表裏一体だ。なぜなら、テキサス州は中南部に位置しており交通の便が良く、北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement,NAFTA)の恩恵によって安価な資材と労働力が入手可能だ。そして、伝統的に市場機能を重視する風土であり、透明性・公平性・流動性に優れている。

市場機能と経済成長を背景に、電力需要は断トツ1位

 テキサス州の産業は、エネルギー、物流・輸送、IT、半導体、機械、宇宙、農業など多岐にわたる。トヨタやテスラがカリフォルニア州から本社を移転するなど、多くの日系企業がテキサス州を拠点に米国事業を展開している。

 これらを背景に電力需要は急増しており、最近では特にシェールオイル・ガス開発、データセンターの新設による需要増が目立つ。

 2021年の米国の電力消費量をみると、テキサス州は436TWhと米国全体の11%を占め、2位のカリフォルニア州(247TWh)の約1.8倍となっている(図2)。なお、日本の2021年度の電力消費量は882TWhである。

テキサスの電力需要は米国で断トツトップ
テキサスの電力需要は米国で断トツトップ
図2●米国の州別電力需要(出所:米国エネルギー省)

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