太陽光発電の新規導入が伸び悩む日本にあって、商業施設などのオンサイトPPA(電力供給契約)に特化して急成長する企業がある。VPP Japan(東京・千代田)だ。固定価格買取制度(FIT)の買取価格引き下げとともに沈んでいく太陽光発電市場において、なぜベンチャーが200億円もの資金調達を成し遂げられたのか。非FITのオンサイトPPAで、なぜ屋上全面に太陽光パネルを置くことができるのか。VPP Japanと親会社のアイ・グリッド・ソリューションズの社長を兼務する秋田智一氏に聞いた。

VPP Japanが非FITオンサイトPPAで設置した太陽光発電所
VPP Japanが非FITオンサイトPPAで設置した太陽光発電所
図1●ヤオコー鶴ヶ島店(埼玉県鶴ヶ島市)の屋上に設置された太陽光パネル(出所:アイ・グリッド・ソリューションズ)

オンサイトPPAで300MWの契約獲得

 「1日1カ所の発電所を作っている、そんなペースです」。秋田氏は言う。

 同社が主要なターゲットとするのは、1000m2以上の屋根を持つスーパーやホームセンターなどの商業施設や物流施設だ。その広い屋根いっぱいに太陽光パネルを敷き詰めると、100kW級の発電所になる。そんな発電所を毎日のように生み出している。

 2017年創業のVPP Japan が保有する太陽光発電は、全国550カ所、118MWに及ぶ。開発のスピードは加速しており、2023年度末までの同社の導入目標は1000カ所、200MW。獲得した契約は既に300MWに達している。

 秋田氏は「1年で100MW近くを作るようになってきた」というが、100MWは「200kWの発電所500カ所」に相当する。「1日に1発電所」を上回るペースだ。

 今の市場の雰囲気を、秋田氏はこう表現する。「もともと、脱炭素のために再生可能エネルギーを導入していこうというトレンドはありました。でも、ここ1、2年は電気料金高騰の影響が大きいですね。これまでは、チェーン店が100店舗あるうち『太陽光発電に向いている3店舗から導入していこう』というものでしたが、『できる店舗は30店でも40店でもやろう。もう、一気にやりたい』。そんな温度感に変わりました」。

図2●VPP Japanとアイ・グリッド・ソリューションズの社長を務める秋田智一氏(アイ・グリッド・ソリューションズ提供)
図2●VPP Japanとアイ・グリッド・ソリューションズの社長を務める秋田智一氏(アイ・グリッド・ソリューションズ提供)

 オンサイトPPAは、PPA事業者の費用で需要家の屋根に太陽光発電を設置し、発電した電力を需要家が固定価格で買い取る、というものだ。20年前後の長期の電力売買契約を結ぶことで、PPA事業者は投資を回収する。VPP Japanの場合は、初期費用ゼロ、20年間、固定価格での電力売買契約を基本としている。発電設備の維持管理もVPP Japanが行うため、需要家側に新たな業務が発生することもない。

 こうした仕組みであるため、需要家にとっては「屋根を貸しているだけ」に、実質的には等しい。それだけで、化石燃料の価格変動や電力市場価格の影響を受けない電気を購入することができるようになる。電力高騰の中、経費削減にも脱炭素にもなる選択肢として需要家を魅了しているのだ。

この先は日経エネルギーNextの会員登録が必要です。日経クロステック登録会員もログインしてお読みいただけます。

日経エネルギーNext会員(無料)または日経クロステック登録会員(無料)は、日経エネルギーNextの記事をお読みいただけます。日経エネルギーNextに関するFAQはこちら