クリーンテック分野の専門調査会社である米Cleantech Groupが毎年公表している「Global Cleantech(GCT)100」。専門家が選ぶ脱炭素分野の有望スタートアップ100社のリストだ。
 前回では過去14年間にGCT100 が「エネルギー&パワー」カテゴリーで選出した企業の歴史をひも解き、日本からGCT100を創出するヒントを探った。今回は「資源&環境」および「交通&ロジスティクス」カテゴリーの選出企業を見ていく。

 「資源&環境」のカテゴリーはCCUS(CO2回収・利用・貯蔵)、炭素会計、リサイクル、大気汚染情報サービス、産業廃水処理、高解像気象予測、温暖化リスク分析、食材廃棄削減、廃棄物分別ロボット、海水からリチウム回収などが対象だ。

 2009年は16社が選定され、その後は微増を続けて2022年は21社となった。2009年の16社のうち11社が水処理で、当時は最大のトレンドだった。まず、GCT100を7回も受賞したカナダOstara(2005年創業)を紹介しよう。

 同社は廃水からリンなど汚染栄養分を除去し、高品質な商業用肥料を再生するプロセス技術を保有し、世界に多数のプラントを稼働させている。2020年、農業食料投資会社の英Wheatsheafに買収された。創業者のAhren Brittonはカナダのブリティッシュコロンビア大学で研究中に最初のプロトタイプを開発し、そのまま起業し、17年間 CEO(最高経営責任者)を務めている。大学での研究成果で起業する典型的なパターンだ。

ブームのCCUS、有望株は米Twelve

 2021年はCCUSがトレンドとなり7社が選出された。今年は8社となり、今後もブームは続くだろう。

 CCUS分野で今一番の有望株と言えば、米Twelve(2015年創業、77Mドル調達)であろう。GCT100には選出されていないが、2020年に「50 to Watch」(次に注目すべき50社)に選定された。今年、米Fast Company誌の「世界で最も革新的なエネルギー会社」第1位にも輝いた。

 同社はPEM(固体高分子)電解技術を用いて、CO2を水と電力を使いCO、エチレンあるいはメタンに変換する技術を開発している。特に、各種プラスチック製品の原料となるCO変成に注力している。

 同社はこの技術を使い、独メルセデス・ベンツ・グループ向けにCO2由来の自動車内装材を開発している。また米P&G向け洗剤や米空軍向け代替燃料、英サステナブル衣料Pangaia向けサングラスなども手掛ける。米SoCalGasや米PG&Eとはメタネーションの実験、日本企業とのPoC(Proof of Concept、概念実証)実績もある。

 ちなみにPoCとは、最新テクノロジーを活用して新サービスを開発する際に、そのサービスの実効性を検証することを言う。技術的な実現可能性を確かめたり、事業的に有効であることを立証したりする。

 筆者は2019年、創業者のEtosha Caveとシリコンバレーのプラグアンドプレイで出会い、バークレーの研究室も訪問した。彼女の創業のエピソードを紹介しよう。

 彼女はスタンフォード大学の博士課程でバイオ触媒ミミクリー(模倣) の研究をしていた。植物がCO2を吸収し、太陽光でさまざまな物質に変換するプロセスを金属触媒で再現しようとしていた。同僚のKendra Kuhlとともにコンピューター・シミュレーションを行い、触媒の量子力学的レベルの解析を何度も繰り返し、ようやく初期的な発見をした。

 研究者の2人はこの発見を商業化したいと考えた。スタンフォード大学では「Business and Engineering Student Night」というビジネススクールの学生と工学系学生の交流イベントが盛んに行われていた。彼女たちは交流イベントでビジネスモデルを一緒に考えてくれるビジネススクールの学生を探した。その結果、起業経験のあるNicolasに出会い、3人で起業することを決意した。

 3人はビジネスプランを練り上げた後、スタンフォード大学のビジネスプランコンペティションに応募するも落選。その時の審査員の1人がcyclotronroadのディレクターで、彼女たちにcyclotronroadのプログラムに応募するようアドバイスした。

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