大手電力と新電力との公平な競争環境を目指した卸取引の「内外無差別」の取り組みが始まってから1年余り。この間の実績を電力・ガス取引監視等委員会が公表した。現状では、大手電力と思うような相対取引ができないといった声が新電力から上がる。競争環境はどこまで改善したのか。

 日本では電源の大半を、現在も大手電力(旧一般電気事業者)が保有している。新電力の多くは相対取引(相対卸取引)もしくは取引所を経由して、旧一電から電力を調達するのが一般的である。

 もし旧一電が社外・グループ外の小売電気事業者と比べ、自社の小売部門に有利な条件で卸売りを行うならば、不当な内部補助として小売市場における適正な競争を歪曲する恐れが生じる。

 このため電力・ガス取引監視等委員会は2020年7月、旧一電各社に対して内外無差別に卸売りを行うことなどのコミットメントを求め、2021年度から履行段階に入った。

 監視委員会はこれまでも制度設計専門会合においてコミットメントの履行状況を確認しており、7月26日に開催した第75回会合 では過去1年の実績として2022年度の受渡し分と、2023年度の交渉に向けた取り組み状況などの報告があった。

旧一電卸取引の内外無差別を監視
旧一電卸取引の内外無差別を監視
図1●卸売価格の監視イメージ(出所:制度設計専門会合)

 ちなみに、東京電力グループおよび中部電力グループはすでに発電・小売部門を分社化しているが、他の8社は同一法人のままである。

 これら8社について、相対卸取引を担当する窓口は小売部門から独立して設置されていることが確認されている。東北電力は2022年度にカンパニー制を導入し、卸売りは発電カンパニーが一元的に実施している。

新電力などへの社外卸し件数は減少傾向

 2020年度冬季のJEPX(日本卸電力取引所)スポット市場価格の高騰を踏まえ、多くの新電力でリスクヘッジの必要性が強く意識されるようになり、旧一電との相対卸取引を増やす動きが強まった。

 しかし、多くの新電力からは旧一電との交渉において、旧一電側の「売り切れ」を理由に希望する数量が調達できないことや、相対卸取引の契約が締結できないという報告が監視委員会に上がっている。

 旧一電が社外(グループ外)に対して、どのような相対契約を何件締結しているかを集計したのが表1である。表1の「今回」とは、2021年度に交渉が行われた2022年度以降の契約であり、「前回」とは2020年度に交渉が行われた2021年度以降の契約を意味する。なお、表1はあくまで契約件数であって、契約の容量(kW)や電力量(kWh)は公開されていない。

2022年度は社外取引件数が減った
2022年度は社外取引件数が減った
表1●旧一電の社外相対卸取引の契約件数(出所:制度設計専門会合)

 表1で直近データ(今回)と前回を比べると、社外との相対契約件数が減少した旧一電が12事業者中6社に上る(北海道、中部、JERA東、JERA西、関西、中国)。

 首都圏および関西、中部といった大需要地において相対契約件数が減少したことは、新電力全体の経営環境に大きな影響は及ぼしただろう。

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