米Googleが始めた再エネ電力調達の新手法「24/7カーボンフリー電力」が世界で注目を浴び始めている。24/7カーボンフリー電力とは、どのような再エネ電力なのか。日本企業はこの新たな動きにどう対応すれば良いのだろうか。

(出所:123RF)
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 昨年より安定供給や燃料価格の高騰が喫緊の課題となった電力・エネルギー業界だが、脱炭素に向けた動きが衰えている様子は今のところ見られない。

 ブルームバーグNEF (Bloomberg New Energy Finance)によると、全世界での2021年の再エネ、交通の電動化、CCS(CO2の回収・貯留)などを含む脱炭素への総投資額は 7550億ドル(1ドル=135円で102兆円)であり、前年比27%増である。2021年の投資額は2015年のおよそ倍となっており、破竹の勢いである。

 日本においても、2022年5月に岸田文雄首相が今後10年間でカーボンニュートラル実現のために官民合わせて150兆円の関連投資を実現すると発言、7月末にはGX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議の初会合を開催した。

 日本は世界の脱炭素のトレンドに追従している。安定供給や燃料価格の高騰への対応は待ったなしだが、脱炭素への取り組みの手も緩められないというのが現実だ。

 脱炭素の主要施策の1つに企業による再エネ電力調達がある。これまでは特定企業を中心とするサプライチェーン単位での取り組みや、「RE100」などの国際的なイニシアティブへの参画などが中心だった。だが、企業の再エネ電力調達は新たな局面を迎えようとしている。

 「24/7カーボンフリー電力」(24/7 carbon free energy、以下24/7CFE)と呼ばれる新しい再エネ電力の調達方法が登場したのである。24/7CFEは、簡単にいうと「24時間365日、100%リアルタイム再エネ電力」という意味だ。需要家の設備と同じ送配電網に接続する再エネ電源による電力を、リアルタイムで使用するという考え方である。

 日本における従来の再エネ電力調達は、火力が主電源である通常の電力供給に小売電気事業者が再エネ電力証書を組み合わせた再エネ電力を調達する手法や、四半期分や1年分の使用電力量(kWh)に対して同量の再エネ電力証書(グリーン電力証書など)を需要家が購入する手法が主流であった。

 24/7CFEの考え方が登場したのは2018年だが、2021年には国連で国際イニシアティブ「24/7 Carbon Free Energy Compact」が始動。2022年には技術標準の案が公開されるなど、動きが活発化してきた。本記事では、24/7CFEの概要を紹介したうえで、これにどう対応すべきかを議論する。

「24/7カーボンフリー電力」とは何か

 24/7CFEの取り組みは米Google(グーグル)から始まった。グーグルがカーボンニュートラルを達成したのは2007年にさかのぼる。当初は、自社の事業から排出される温暖化ガスを、カーボン・オフセットや再エネ電力証書の適用によって実現するカーボンニュートラルだった。

 2010年代に入り太陽光発電や風力発電のコストが下がると、グーグルは再エネの供給者と直接、電力購入契約(PPA)を締結。2017年には再エネ電力100%を実現した。

 再エネ電力100%には、色々な実現方法がある。グーグルが2017年に達成したのは、自社の使用電力量の総量と再エネ電力の供給量を一致させたことによる100%だ。個々の施設単位で見れば、常に再エネ電力で賄えているわけではない。

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