電力市場の高騰や変動が激しさを増す中、資源エネルギー庁は小売電気事業者のリスクマネジメントに関するアンケート調査を実施した。そこからは多くの事業者が電源調達や需給管理を親BG(バランシンググループ)など他社に委託している実態が浮かび上がった。だが、その場合も電源調達価格は市場連動であるなど、市場リスクを負う契約も多い。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

 燃料高騰などに起因する市場環境の激変が小売電気事業者を襲っており、リスクマネジメントの重要性が高まっている。

 資源エネルギー庁は、かねて小売電気事業者にリスクマネジメントの強化を働きかけてきたが、このたび小売電気事業者を対象にアンケート調査を実施。4月26日に開催した電力・ガス基本政策小委員会の場で 結果を公表した [実施期間:2022年2月28日~3月11日、対象:全小売電気事業者749社=2022年2月28日時点、回答数:222社(約30%)]。

 本稿では情報を補足しながら、小売電気事業者のリスクマネジメントの実態をアンケート結果から読み解いていきたい。

 まず、小売電気事業者の経営状況から見ていく。

 燃料価格や電力市場価格の高騰で小売電気事業者の採算は悪化している。回答222社の2021年度収支は黒字見込みが53%、赤字見込みが46%であった。

 これとは別に、東京商工リサーチは最新期の損益が判明した新電力181社中、黒字は79社(44%)に対し、赤字は102社(56%)だったと発表している。いずれの数字からも深刻な現状が浮かぶ。

回答222社中「子BG」が125社

 まずは、リスクマネジメントに関する経営体制として、需要バランシンググループ(BG)の形成から見ていこう。

 BGとは、一般送配電事業者がインバランスを算定する単位を指す。小売電気事業者による需要インバランスを算定する「需要BG」と、発電事業者などによる発電インバランスを算定する「発電BG」がある。小売電気事業者のリスクマネジメントに関連するのは、需要BGだ。

 小売電気事業者1社で一般送配電事業者と接続供給契約を締結する場合を「単独BG」と呼ぶ。複数の小売事業者が集まってグループを形成する場合、「親BG」と呼ばれる事業者が、代表契約者として送配電事業者と接続供給契約を締結する。親BGは、このグループに参画する他事業者の需給管理や電源調達を受託する。親BGに需給管理などを委託する事業者を「子BG」と呼ぶ。

 回答222社中、BGの立場としては125社が「子BG」であった。

小売りの半数以上は子BG(BG加入)
小売りの半数以上は子BG(BG加入)
図1●BGの形成(エリアによって状況が異なる場合は複数回答可)(出所:資源エネルギー庁)

 「単独でBG」(77社)か「親BG」(34社)である場合、通常はJEPX(日本卸電力取引所)で取引する。2022年4月時点のJEPX電力取引会員数は251社であるため、小売ライセンスを持ちながらJEPX会員でない事業者は498社に上る。このことからも小売電気事業者の多くは「子BG」だとわかる。

 これにより、アンケート回答社222社の内訳は下記のように推察できる(*1)。

・単独か親BGの回答率は44%(77+34件/251社)
・子BGである者の回答率は25%(125件/498社)

*1:図1の回答数(236件)が回答社数(222社)を上回っているのは、エリアによって状況が異なる場合は複数回答可としたためで、14社はエリアにより状況が異なると推察されるが、ここでは回答数を社数と見なした。

 概算だが単独および親BGの回答率と子BGのそれとは20ポイントほど差がある。つまり、アンケート結果はこうした偏りが反映されていることに留意しながら読み進める必要があるだろう。

 ちなみに、資源エネルギー庁が毎月公表している「電力調査統計」を見ると、小売電気事業者の販売電力量が確認できる。旧一般電気事業者を除いた高圧・特別高圧の販売電力量の90%を供給している新電力54社のうち、JEPX会員は48社に上る(2021年12月)。この状況を勘案すると事業規模が大きい新電力は自ら需給管理や電源調達を手がけ、単独BGもしくは親BGであり、中小規模の小売事業者の多くが子BGという実態が見えてくる。  

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