「グリーンな」「サスティナブルに」「CO2排出ゼロです」――。気候変動への危機感の高まりとともに、脱炭素などをアピールするCMがメディアにひしめきあっている。
 一方で、いわゆる「グリーンウォッシュ」への監視の目は強まり、欧米ではPR内容の厳密な審査と、広告の削除命令・罰金などが続く。それ加え「一部の見栄えの良い事業」をピックアップしてPRするだけでも、グリーンウォッシュと見なされる可能性が見え始めている。
 さらには究極の対策とも言える「化石燃料の広告禁止」に踏み込む国や自治体も現れている。

エクイノールは「ガスを低炭素エネルギーと主張している」と指摘されて広告を取り下げた
エクイノールは「ガスを低炭素エネルギーと主張している」と指摘されて広告を取り下げた
図1●ロンドン・地下鉄ウエストミンスター駅にて2019年撮影された北欧石油最大手エクイノールの広告(出所:国際非政府組織グローバル・ウィットネス提供)

 「We’re the low carbon energy just over the horizon.(私たちは水平線の向こうにある低炭素エネルギーです)」。

 英国の政策決定者らが行き交う、ロンドンの官庁街の最寄り駅にこんなポスターが掲げられていた。キャッチコピーの通り、水平線上に並ぶ風力発電機がポスターには描かれていたが、もう一言、小さい字でこう付け加えられていた。「エクイノールは英国最大の輸入ガス供給者であり、英国の風力発電の主要な供給者でもあります」。

 国際非政府組織(NGO)グローバル・ウィットネスのムレイ・ワーシー氏は、このポスターに違和感を感じた。「これはガスが低炭素エネルギーであると主張している」。彼は英国の広告自主規制機関である広告基準協議会(ASA)に苦情を伝えた。

 ファイナンシャルタイムスによると、苦情を受けたASAは北欧石油最大手エクイノールに広告を使用しないようにと伝え、同社は二度と使用しないことに同意。ワーシー氏によると、エクイノールは「風力発電が低炭素だと伝えることを目的としていた」とASAに回答したが、広告が「そのように解釈されなかったかもしれない」と認めたという。

 ここまで細かく監視されるのかと驚くかもしれないが、このような規制機関からの“レッドカード”は既に珍しいものではなくなっている。自社の製品やサービスの環境価値を誇大にアピールする、いわゆる「グリーンウォッシュ」に対する目は、厳しさを増しているのだ。

 グリーンウォッシュはESG関連の金融商品についても問題なっているが、本稿では主に一般の商品やサービスのPRについての現状を報告したい。

撤回された「排出量が最も少ない」

 「欧州で最も運賃が安く、排出量も最も少ない航空会社」。欧州格安航空会社(LCC)の最大手であるライアンエアー(アイルランド)は、こんな広告キャンペーンをテレビやラジオで展開していた。しかし、英ASAに167件の苦情が寄せられ、それを受けてASAは審査を実施。2020年2月、広告禁止の判断を下した。

 ライアンエアーは「機体やエンジンが新しい」「座席占有率が最も高い」ことを広告の根拠としてアピールしており、ASAに対し追加の裏付け資料も提出した。

 しかしASAは、「(排出量が最も少ないと言っているのに)いくつかの有力な航空会社が比較表に無く、測定されたか不明」「根拠グラフの1つが2011年のもので立証価値がない」「排出量の計算方法などの情報が不足し、根拠が明確でない」と、ライアンエアーの示した根拠の不備を次々と指摘。当該の広告を使用禁止とし、環境PRをする際は十分な根拠を示すようにと指導した。

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