大手電力が多用しているブロック入札が、スポット市場の流動性や透明性を損なうとの指摘が出始めている。電力・ガス取引監視等委員会の調査で明かされた実態の一端は市場関係者の疑問を深めるものだった。独自分析から背景や問題点を探る。

 関係者の努力により近年、JEPX(日本卸電力取引所)スポット市場の取引量は劇的に増加しており、1日当たりの約定量は10億kWh程度まで増えている。

 電力・ガス取引監視等委員会の 「自主的取組・競争状態のモニタリング報告」 によると、2021年7~9月期における旧一般電気事業者によるスポット市場売り入札量は711億kWhに上った。

売り入札量は増えているが・・・
売り入札量は増えているが・・・
図1●スポット市場売り入札量(2020年7月~2021年9月)(出所:電力・ガス取引監視等委員会)

 しかし、この取引量には様々なものが含まれており、実質的な売り入札量がどの程度存在するのかは必ずしも明らかではない。

 例えば、旧一電であればグロスビディング(GB)の売り入札量は369億kWhにも上るが、そのほとんどが旧一電により買い戻されているため、実質的な売り入札量としてはカウントできない。

 同じ理由で間接オークションの売り入札分や先渡市場、ベースロード市場の既約定分なども除外される。

 なお図1の旧一電による売り入札量には、一般送配電事業者によるFIT電気(送配電買い取り分)の売却も含むためさらに全体像を見えにくくしている。

 本稿執筆時点において2021年の年間データは得られていない。2020年の集計結果が表1である。

2020年の売り入札は2400億kWh
2020年の売り入札は2400億kWh
表1●旧一電による売り入札量、約定量等(2020年)(出所:監視委員会の資料を基に著者作成)

7割を占めるブロック入札

 ブロック入札は、バランス停止火力の起動を促すなどにより取引所への売り入札量を増加させることを目的として2013年2月に導入された。ブロック入札の導入後、実際に入札量は増加しており、一定の効果を果たしたと言っていい。

 しかし足元では、一部の事業者によるブロック入札の在り方が、逆に市場の流動性を悪化させる懸念も指摘されており、監視委員会では暫定的な分析を報告している。

 その一環として、2021年(2020年)の10月だけという限定的な情報であるが、ブロック入札の約定量などが公開された。

ブロック入札の約定は3割未満
ブロック入札の約定は3割未満
表2●旧一電によるブロック入札量(出所:電力・ガス取引監視等委員会)

 表2の集計対象は旧一電(沖縄を除く)、JERA、Jパワー(電源開発)である(以下、旧一電等)。また「①売り入札量全体」は、GBや相対卸向け取引を除いていることが明記されているものの、間接オークションなどの扱いには言及していない。だが、本調査の目的からそれらも除外した「実質的な売り入札量」であるとここでは捕らえるものとする。

 では、旧一電らはスポット市場にどの程度の電力量を供出しているのであろうか。以下では簡易化のため2021年10月のみを対象に検証する。

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