7月21日開催「残された時間は1年半、容量市場対策の実務ポイント ~勝ち組新電力に学ぶ、対応フローと電源調達の具体策~」
2024年度に始まる容量市場。対策を怠れば、そも負担額が新電力の経営を圧迫します。他方、やり方によっては影響をほぼゼロにすることも可能です。早くも負担軽減対策にめどをつけた新電力の実例を基に、容量市場対策の具体的なやり方を解説します。詳細・申し込みはこちら
(出所:123RF)
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 この夏もJEPX(日本卸電力取引所)の市場価格が高騰する可能性が高まってきた。正直なところ、高騰しない理由を探す方が難しいほど、悪条件が重なりつつある。新電力の電源調達状況はすこぶる悪く、大量淘汰の可能性すら見え隠れする。

 2021年の冬の価格高騰は、大手電力のLNG(液化天然ガス)調達量が不足したことで天然ガス火力発電所が軒並み出力を低下。発電電力量が大幅に減ったため、JEPXは1カ月近く売り切れ状態が続いた。

 資源エネルギー庁や大手電力各社は、寒波襲来による電力需要の増加が原因だと説明したが、実際には例年と比較して大した寒波ではなかった。百戦錬磨の大手電力各社が、単純に寒波でLNG調達量が不足したとは到底考えられない(「電力市場高騰の怪、『寒波主犯説』の思い込みを斬る」)。

 つまるところ、新電力のシェアが拡大し、大手電力の小売部門がエリア需要を正確に予測するのは不可能になってきたということだろう。予測ミスに気がついた時には、時すでに遅しだ。

 新型コロナウイルスによる経済低迷から中国経済が復調し、LNGの需給はタイトになっていた。JERAなど調達規模が大きな企業は別として、LNG調達に苦戦した大手電力もいたといわれる。

今夏は石炭火力発電所も止まる?

 今夏に向けては、早くも3月から市場高騰のシグナルが出始めた。まず気象だ。

 今年2月に気象庁が発表した暖候期予報では、エルニーニョ・南方振動の周期からラニーニャは終結するため、猛暑にはならないはずだった。ところが5月下旬になって、偏西風の流れが例年とは異なることが判明。多くの気象予報士が「今夏は猛暑になる」と予測し始めた。

 太平洋高気圧とチベット高気圧の両高気圧が、ちょうど日本列島の真上で重なり猛暑となる可能性が気象シミュレーションで示されたのだ。夏の電力需要はエアコンによるところが大きく、猛暑になると電力需要は急激に増える。

 7月23日に開幕する東京オリンピック・パラリンピックの影響を懸念する声もある。通常であれば需要が減少する土日に、自宅でテレビ観戦する人が増えることで、思わぬ需要の増加が起きる可能性があるためだ。今夏は総じて、電力需要が増える可能性が高そうだ。

 大手電力各社のLNG調達状況も芳しくなさそうだ。新型コロナで停滞していた世界経済が回復の兆しを見せ、燃料価格は上昇している。日本の火力発電の半分はLNG火力だが、LNG価格は調達量で日本を圧倒する中国に振り回される。

 目下、中国は急激に需要が回復している。そして今夏、猛暑に襲われそうなのは、日本も中国も同様だ。

 ある大手電力幹部は、「LNG価格は既に高くなっている。加えて、石炭火力用の燃料炭が手に入らない。JERAなど規模の大きな電力会社は調達できているが、地方の大手電力は調達に苦戦しているのが実情だ」と明かす。

 今冬はLNGの調達量不足でLNG火力の出力が低下した。今夏は、LNG火力に加えて石炭火力の出力低下が起きる可能性まであるというのだ。

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