バイデン新大統領の誕生によって、米国のパリ協定復帰が濃厚となっている。ただ、米国が脱退していた4年の間に、再エネ関連産業は中国勢と欧州勢が席巻。米国の存在感は乏しい。出遅れたバイデン政権は、いかにして巻き返しを図るのか。

(出所:Adobe Stock)
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 最後まで結果が分からない歴史的な接戦を制して、民主党のバイデン前副大統領が第46代大統領に選出されることが確実となった。同氏が掲げる注目政策の1つが、地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」への復帰だ。

 パリ協定は2015年末の合意から1年も経たずに発効した。「京都議定書」が1997年に合意したものの2005年まで発効しなかったことを考えると、驚くべきスピードだ。

 その立役者となったのが米国である。米国は京都議定書を批准しなかったが、パリ協定については批准の国際的な流れを作るために積極的に動いた。なかでも温室効果ガスの大量排出国である中国への働き掛けに力を入れた。

 それが2016年9月に当時のオバマ米大統領と習近平(シー・ジンピン)中国国家出席が同時にパリ協定の批准を表明するという、今日では考えられないイベントにつながった。両大国が参加したことで、パリ協定は脱炭素社会に向けた世界的なトレンドをなった。

 京都議定書は1990年を基準年とした温室効果ガスの一定率削減という、脱炭素社会に向けた過渡的な取り組みだった。これに対してパリ協定は、気温上昇を2度以内に抑え、う気候変動による被害を最小化することを目標に掲げている。そのパリ協定が、発効から4年を経て、再び米国によって加速しようとしている。

 気候変動対策をリードするEUは、早くから21世紀中盤のカーボンニュートラルを目標に掲げてきた。2020年になって、ついに中国が2060年までにカーボンニュートラルを目指すと表明。保守的な削減目標に留まっていた日本も、菅義偉首相が就任早々に2050年のカーボンニュートラルを目指す方針を打ち出した。

 ここでバイデン新大統領が主要国と同レベルの目標を掲げれば、カーボンニュートラルに向けた世界的な動きは確固たるものになる。

 その意味で、今般の米国大統領選挙の結果は、4年前の米中同時のパリ協定批准に匹敵する出来事となる可能性がある。

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