電力小売り全面自由化がスタートした2016年。政府が電力システム改革の「貫徹」を掲げ、最も力を入れた制度導入が、東京電力・福島第1原子力発電所事故の賠償費用と、廃炉の前倒しにかかる費用の託送回収だった。電力を選択できる時代にあって、全需要家に原子力関連の費用負担を求める制度が、この10月から実施に移される。新電力は需要家にどう説明するかが改めて問われる。
電力全面自由化から日も浅い2016年から2017年にかけて、原子力発電関連費用の一部である「賠償費用の過去分」や「廃炉会計費用」を、託送料金で回収することが決まったことを、ご記憶であろうか。
この託送料金の改定が、2020年10月1日から適用される。
大手電力か新電力かを問わず、託送料金が改定されれば、通常は小売料金を改訂する。
詳細は後述するが、実は10月1日以降、当面は小売料金自体を変更しないで済ますか、エリアによっては値下げとなるケースもあり得る。それでも“中身”が変わることに変わりはない。
資源エネルギー庁は電気料金の内訳における「費用(回収額)の透明性の確保」を求めている。これに従うとすれば小売電気事業者には需要家への説明が求められるところだ。
ことは国民の間で議論が割れやすい原発に関連することでもある。小売電気事業者や政府の対応はどうあるべきか。
それらを考える前に、今回の託送料金変更をまず押さえておこう。料金改定は表1のとおりである(沖縄電力は対象外)。
過去の「不足額」をこれから徴収
託送料金は一般送配電事業者9社のうち5社が値上げ、4社が値下げとなっている。値上げする5社は新型コロナウイルス感染症に伴う需要家の負担に配慮する観点から、2021年9月30日まで現行料金に据え置くとしている。
なお、大手電力の小売部門は、託送料金変更に伴う小売料金の改訂に関して、まだ方針を公表していない。
なぜ、原発事故の「賠償負担金」を託送料金で回収することになったのか。まずは、4年前の議論を振り返っておこう。
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