慌ただしく制度議論や方針決定がなされた2019年末とは打って変わって、この年始は審議会も少なくスロースタートだ。新年度を2カ月後に控え、2、3月は各審議会の議論も活発化しそうだが、その前に1月20日から始まった第201回通常国会に注目したい。電気事業法改正案には、巨大台風や大地震を契機に注目を集める「マイクログリッド」を実現するための配電事業者のライセンス制(免許制)が盛り込まれる見通しだ。

(出所:Adobe stock)
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 経済産業省は今回の通常国会に、電気事業法、再生可能エネルギー特別措置法(FIT法)、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法(JOGMEC法)の改正案を提出すると報じられている。

 電気事業者にとって、とりわけ関心が高いのは電気事業法とFIT法だろう。いずれも2019年末までに各審議会で議論され、取りまとめられた方向性に基づいた改正案が出てくる見込みだ。

 通常国会に提出予定の改正法案は、電気事業法関連では、災害時連携計画の提出義務化や電力データの電気事業法目的外利用の例外措置、託送料金制度の見直し(レベニューキャップ導入)、配電事業者のライセンス制導入、アグリゲーターの電気事業法上の位置付けなどが盛り込まれる見通しだ。また、FIT法関連ではFIP(フィード・イン・プレミアム)の導入などが項目として挙げられる。

 今回はこの中で配電事業者のライセンス制について、その議論の経緯、現在の取りまとめ状況について解説していく。1月30日時点で電気事業法の改正案が出ていないので確かなことは言えないが、おそらくライセンス制導入の方向性を定め、詳細は今後検討する流れになるのではないだろうか。

配電免許制は台風被害がきっかけだった

 昨年9月の台風15号に伴い、千葉県内を中心に東京電力パワーグリッド(PG)管内で大規模な停電が発生し、関係者間の連携の不備などにより復旧に長時間を要することになったことは記憶に新しいかと思う。政府、特に経産省は、この事態を重く受け止め、原因究明と対策について取りまとめを行い、必要な対応を図ることになった。

 その一方で、停電時に電力や熱の供給が行えた事例もあり、注目を集めている。例えば、太陽光発電設備や蓄電池を設置している家庭では、自立運転機能の活用によって電気を一部利用することができた。千葉県長生郡睦沢町が出資する自治体新電力、CHIBAむつざわエナジーが手がける「むつざわスマートウェルネスタウン」では、ガスエンジンコージェネレーション(熱電併給)と自営線を活用し、停電時も電力と温水を供給し続けた。

 こうした動きも踏まえ、資源エネルギー庁の「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会 /産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会 合同電力レジリエンスワーキンググループ」は、2019年11月6日に提示した中間論点整理で、電力ネットワークの強靭化と電源などの分散化によるレジリエンス強化を打ち出した。そして、この中間論点整理の内容は、傘下の小委員会などに展開し、速やかに制度面での検討に着手することになった。

 そこでエネ庁は、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会の下に「持続可能な電力システム構築小委員会」を設置し、議論の場を移した。この小委員会は2019年11月8日から、ごく短期間に計4回開催し、12月26日に中間とりまとめ案を公表。2020年1月24日までパブリックコメントを募集していた。

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