太陽光発電には多くの弱点がある。その代表が変動電源ゆえに太陽光が増えれば調整力がその分必要になり、コストアップを招くというものだ。しかし、それも使い方次第だ。風力や地熱、バイオマスなど再生可能エネルギー導入のバランスが重要になる。

太陽光発電が主要エネルギーへ
太陽光発電が主要エネルギーへ
(出所:PIXTA)

 今どきの太陽光発電は、安さが身上である。国内では設備を長持ちさせることが他国並にコストを引き下げるための大前提であり、長寿命化を実現するノウハウ修得が重要だ(前編「日本の太陽光が高いのは『ノウハウ不足』が原因」参照)。

 コストを引き下げ、その安さを生かすには、使いどころのコントロールも大切である。基本的には運転に燃料不要の太陽光や風力の電力を最優先で使い、火力の燃料消費量をできるだけ抑えることだ。

 そのため、調整力としての火力発電は多少効率が低くても、設備費が安く、起動・出力変更・停止も柔軟にできるガスタービンなどが有利になってくる。国内では大規模石炭火力の増設が目立つが、柔軟性に乏しく排出原単位も大きい。足下では低コストであるものの、長い目でみればガス火力などに比べて環境コストなどリスク要因もある[1]。

 出力変動への対策は足りない電力分だけを水力や火力で補うのが基本となる。逆に電力が余り気味の時は、他の時間帯から需要を誘導する(需要の能動化)(図1)。それでも余った時に初めて出力抑制する。燃料費が不要な太陽光の電力を最大限活用するこの方法が最も合理的だ。

出力と需要の予測に従って、安い時間帯に需要を誘導する(実線から破線へ)
出力と需要の予測に従って、安い時間帯に需要を誘導する(実線から破線へ)
図1●需要の能動化の概念図(出所:著者作成)

 ここで電力需給の調整手段として蓄電池を連想される方が多いかも知れない。しかし、太陽光や風力が年間の電力供給に占める比率が25~40%程度になるまでは、海外と送電線がつながっていない孤立系統の日本にあっても、蓄電池を大量に使う必然性は乏しい[2]。

蓄電池は当面、必須ではない

 もちろん技術的には蓄電池を大量に使うことも可能だが、年間の発電量でわずか数%程度の出力抑制を無くすためだけに蓄電池を追加して、全体のコストが何割も高くなっては本末転倒である。ピーク専用ガス火力の代わりに定置型蓄電池を選ぶ海外事例も出現しているが、現時点では限定的である。

 蓄電池に本格的に頼るのは、近い将来に普及が見込まれる電気自動車(EV)の蓄電池を活用することで、なるべく蓄電池自体の追加コストを考えなくて済むようにするのが合理的だろう。水素の活用も考えられるが、当面はまだコスト的に見合わない。

 日本では国や大手電力会社が早くから太陽光発電の普及に取り組んできたこともあり、再エネと言えば太陽光というイメージを持つ人も多い。しかし発電量を稼ぎ、化石燃料の消費量を減らすという点では、実は風力発電や地熱発電の方が重要である。

 特に風力発電は太陽光とバランス良く普及させていくことで、どちらかが電力供給できる機会を増やし、化石燃料の使用量をよりスムーズに削減できる。ドイツにおける発電量の内訳を見れば、イメージしやすいかもしれない(図2)。風力も太陽光も出力が変動するが、両方を組み合わせることで時間帯ごとの発電量がより需要に近くなる。

化石燃料を減らすのは再エネのバランスが鍵
化石燃料を減らすのは再エネのバランスが鍵
図2●ドイツにおける1週間の発電量内訳の例(出所:Fraunhofer ISE)。黄色が太陽光、その下のグレーが風力

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