世界では再生可能エネルギーの価格低下が進み、火力発電よりも安くなる国が増えてきた。しかし、国内では低コスト化が思うように進んでいない。どうすれば、他国のように再エネを安く使えるようになるのか。太陽光発電の課題と方策を探った。

ドイツの屋根置き太陽光発電(出所:PIXTA)
ドイツの屋根置き太陽光発電(出所:PIXTA)

 日本がオイルショックに見舞われた1970年代初頭、太陽電池は家一軒分(3kW)で数億円した。屋根に載せるお金で、家そのものが何軒も買えた。それが今や、太陽電池モジュール(いわゆるパネル)の国際的な取引価格は、出力3kWで約10万円と当時の1000分の1以下になっている。

 畳より安い。化石燃料を輸入するよりも安い。おかげで太陽電池メーカーは儲からなくなってしまったが、世界では太陽光発電は最も安い電源になりつつある(図1)。

火力発電と同等もしくは安い再エネが増えている
火力発電と同等もしくは安い再エネが増えている
図1●2010年と2018年時点の世界の再エネの発電コスト(出所:IRENA, Renewable Power Generation Costs in 2018)

 日本よりも日射条件が悪いドイツですら、発電単価は火力発電より安くなった。もちろん、温暖化ガスの排出量も少ないし、エネルギーの自給率も向上する。ちなみに太陽光発電のライフサイクルでの環境性能を疑問視するような主張は科学的に否定されている(例えばIEAのレビュー[1]を参照されたい)。

 同様に風力発電も技術の向上と量産効果で安くなり、世界的には火力発電以下のコストになってきた。先進国のみならず、エネルギー需要が急増している途上国や新興国においても、安価でCO2排出コストを回避でき、政治的・技術的にも取り扱いが容易なエネルギー源として需要が伸びている。

安さで世界に広がる再エネ

 太陽光や風力は自然条件で出力が変動することが問題視されてきたが、気象予測や情報通信、電力制御などの技術向上で、主要な電源として使える域に達しつつある。現在、再エネは水力を除いて世界の電力の1割、水力を入れると4分の1、太陽光単独では2%強を占める(図2)。

世界の電力の1割が水力除く再エネ
世界の電力の1割が水力除く再エネ
図2●世界の発電量に占める再エネの割合(2018年時点)(出所:REN21, Renewables 2019 Global Status Report)

 ブルームバーグなどの調査会社のみならず、比較的保守的な見通しを出すことで知られるIEA(国際エネルギー機関)やEIA(米エネルギー情報局)ですら、今後主要な電源に成長すると見ている。

 加えて蓄電池の価格も急速に安くなってきている(図3)。電気自動車(EV)の価格もあと数年で内燃機関車と肩を並べそうな情勢である。EVの普及は、運輸部門の低炭素化と、EVの蓄電池を利用した電力の調整力確保が期待できるため、各国で普及を後押しする動きが活発化している。

EVの低コスト化は進む
EVの低コスト化は進む
図3●電気自動車の車両価格に占める蓄電池コストの比率(出所:BloombergNEF,2019年)

 最近では、2050年までには世界の全てのエネルギー需要を再エネで賄っても、現在と同程度のエネルギーコストで済ませられそうだという見積もりまで出ている[4]。かつての超高額ニッチ電源の太陽電池のイメージからは、まるで想像もつかなかった時代がこようとしている。

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