欧米でVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)アグリゲータービジネスが注目されて久しい。これまで数々のスタートアップが参入するも、事業性に乏しく苦戦してきた。だが、ここへ来て情勢が変わってきた。英Centricaグループをはじめとする「巨人」の参入が相次いでいるのだ。
 ここでは、日経BP 総合研究所が発刊した「世界エネルギー新ビジネス総覧」から、VPPアグリゲーターの最新ビジネスモデルの一部を紹介する。

 欧米では、エネルギー業界の「巨人」がVPPビジネスに相次いで参入している。既存の大規模発電所をベースにした電力事業や石油・ガス事業などの大規模集中型ビジネスが頭打ちになる中で、DER(Distributed Energy Resources:分散型エネルギー資源)の活用による分散型ビジネスを志向し始めたからである。

 VPPビジネスには「死屍累々」との見方がある一方で、より付加価値の高い収益源を求めて新しいビジネスに挑戦する動きも出てきている(「海外でも死屍累々、VPPビジネスを収益化するポイントは?」参照)。

 その代表が、英国最大の電力・ガス小売事業者であるBritish Gasを傘下に持つCentricaグループだ。

 同グループは、2015年11月に英CBS(Centrica Business Solutions)を設立して、DERビジネスに本格参入した。同社は、DERビジネス事業者を買収することによってDERポートフォリオを充実させてきた。中でも、ベルギーの大手アグリゲーターであるREstoreを2017年11月に買収したことが、VPPビジネスを強化した面が大きかった。

 REstore創業者の1人で、現在はCBS Golobal Director of OptimisationのPieter-Jan Mermans氏によると、Centricaの傘下に入って注力し始めたものの1つが、住宅向けのビジネスだという。

 同社はこれまで、C&I(商業・産業施設)向けのB2Bビジネスを中心としてきた。通常、住宅向けのVPPは搭載するDERの規模が小さく、IoT(モノのインターネット)関連機器の設置費用などを考慮するとコストパフォーマンスが低いという課題があったためである。

エネルギー機器にIoT機器をバンドル販売

 そこで、REstoreは、エネルギー機器や家電製品メーカーなどのパートナー企業が販売する機器にあらかじめVPPのためのIoT機器を組み込んで販売することで、設置コストを低減するソリューションを考案した。

図1●Centricaグループが住宅オーナー向けに提供しているスマートフォン向けのアプリケーション
図1●Centricaグループが住宅オーナー向けに提供しているスマートフォン向けのアプリケーション
太陽光発電システム、CHP、蓄電池、給湯器など導入したエネルギー機器の稼働状況をモニターでき、設定温度などを制御できる(出所:Centrica Business Solutions)

 住宅オーナーは、エネルギー機器を購入するだけで各機器の稼働状況をスマートフォンなどから監視・制御できるとともに、VPPサービスを受けられる(図1)。Mermans氏は、「パートナー企業数は8社にのぼり、住宅顧客は約6万軒にのぼる」と言う。

 VPPの対象となるDERは、ヒートポンプ、住宅用蓄電池、給湯器などである。このうち給湯器については、英Mixergyと提携している。

 Mixergyは、IoTを組み合わせてスマート給湯器を開発するスタートアップで、Centricaグループが出資もしている。同社は、貯湯槽内の熱水温度を制御することで、効率的に熱水を取り出す手法などを開発した。ここに、VPPサービスを追加して、付加価値を上げる狙いだ。

この先は日経エネルギーNextの会員登録が必要です。日経クロステック登録会員もログインしてお読みいただけます。

日経エネルギーNext会員(無料)または日経クロステック登録会員(無料)は、日経エネルギーNextの記事をお読みいただけます。日経エネルギーNextに関するFAQはこちら