FIT認定済み事業のFIP移行解説の後編です。前編「FITからFIPで売電収入は増える? 過積載太陽光や蓄電池充電など変更点も」ではFITの買取期間や価格がFIP移行でどうかわるのか、FIP移行によるメリットを取り上げました。後編では、デメリットやリスク、FIP移行後の売電契約時の注意事項についても解説します。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

【質問1】 FITからFIPへの移行に際して、気を付けるべきことはありますか。

【回答1】 FITからFIPへの移行には様々なハードルがあります。既にFITを利用した売電が順調に行われている発電所では、発電事業者があえてリスクを冒してFIPに移行するインセンティブは低くなりがちです。

 発電事業者はFITからFIPへの移行により多くの収入を得る機会が得られるというアップサイドの利点があります。一方で、発電所の建設・運営に資金を提供している金融機関にとっては、利息収入が増えるわけでもありません。メリットに乏しいため、発電事業者がFITからFIPへ移行しようとしても金融機関の承諾が得られないというケースが大いに考えられます。

 また、具体的なリスクは大きく2種類あります。1つがFIPの仕組みそのものに起因するリスク、もう1つが売電の仕組みの変更によるリスクです。後者は、FITにおける特定契約から、買い主との相対交渉によるPPA(電力購入契約)に変わることに起因します。

FIPの仕組みに起因するリスク

 FITの仕組みに起因するリスクとして、発電設備の発電パターンにより収入が不確実となる「プロファイルリスク」があります。FIPの基本的なコンセプトは、発電事業者が市場価格相当額で電力と非化石証書を売却する限り、FIPプレミアムの収入と合わせると、FIT買取価格による売電と同等の収入が得られるというものです。FIPプレミアムの単価は、FIP価格から参照価格を控除する形で計算され、参照価格は市場価格を基準に決定されます。

 しかしながら、参照価格は1年単位で計算されます。発電する時間帯が、市場価格が高い時期に偏った場合、参照価格相当額で売電した場合よりも多くの収入を得ることができます。一方、発電する時間帯が市場価格の低い時期に偏ると、得られる収入は、参照価格相当額で売電した場合を下回ることになります。

 太陽光と風力という自然変動電源の場合、この仕組みがさらに複雑です。太陽光・風力それぞれについて、一般送配電事業者のエリア全体での30分単位の発電量で加重平均した市場価格が参照価格に用いられます。

 そのため、そのエリアの太陽光あるいは風力の全体の平均的な発電と比べて、電力の市場価格が高い時間帯に発電が偏ると市場売電により得られる収入は参照価格相当額での売電を超える可能性がありますが、逆に電力の市場価格の低い時間帯に発電が偏ると、市場での売電収入は参照価格相当額での売電を下回るおそれがあります。FIPの下で発電事業者が得られる収入には、このような不安定要素があります。

この先は日経エネルギーNextの会員登録が必要です。日経クロステック登録会員もログインしてお読みいただけます。

日経エネルギーNext会員(無料)または日経クロステック登録会員(無料)は、日経エネルギーNextの記事をお読みいただけます。日経エネルギーNextに関するFAQはこちら