2022年4月にFIT(固定価格買取制度)に代わる再エネ発電事業への助成制度として始まったFIP(フィードインプレミアム)が、その対象範囲を拡大しています。FIP導入以降に認定を受ける事業だけでなく、それ以前にFIT認定を受けた事業についても、要件を満たせばFIPに移行することが可能です。
 FITからFIPへの移行は、国民負担に支えられた再エネ発電事業を市場に統合するという観点からも望ましいことです。ただ、移行にはハードルもあります。そこで今回は、FIT認定済み事業のFIP移行について、その意義と課題を前後編で解説します。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

【質問1】 既にFIT認定を受けた事業は、FIPへ移行できるのですか。移行できる場合、FITの調達価格や調達期間は引き継がれるのでしょうか。

【回答1】 FIP認定の対象となる電源種別・規模であれば、既にFIT認定を受けた再エネ発電事業であっても、FIPへ移行することができます。太陽光発電は10kW以上、風力発電は50kW以上であればFIPへの移行が可能です。

 FITからFIPへ移行すると、系統への接続方法と電力の売買方法が変わります。まず大きな変更点が、「FITインバランス特例」を使えなくなることです。

 通常、発電事業者は計画値同時同量制度に則り、自社の発電設備の発電量を30分単位で予測して「発電計画」を作成し、電力広域的運営推進機関に毎日提出します。発電量の予測と実績の差分が生じた場合には、インバランス料金の支払いが発生します。

 FITの開始によって発電事業に新規参入が相次ぎましたが、太陽光発電や風力発電のような自然変動型の再エネ電源は発電量の変動が大きく予測が難しいものです。そこでFITと併せて導入されたのがFITインバランス特例です。FIT発電設備については、この特例制度を利用すれば一般送配電事業者がインバランスへの対応を行ってくれ、インバランス料金も発生しないというものです。

 FIPに移行すると、FITインバランス特例は利用できなくなり、通常の発電事業者と同じように電力広域的運営推進機関に日々、発電計画を提出しなければならず、インバランス料金も発生します。系統接続時には、一般送配電事業者に「発電量調整供給契約」を申し込む必要があります。小売電気事業者やアグリゲーターに売電する場合は、売電先の事業者が一般送配電事業者との間で発電量調整供給契約を締結します。

 また、FIPに移行するにあたっては、電力の取引方法をあらかじめ決めておく必要があります。相対契約で売電する場合は、契約相手が具体的に想定されていることが要件となっているためです。

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