政府は2月28日、「GX脱炭素電源法案」を閣議決定しました。GX脱炭素電源法案は束ね法案で、原子力基本法や電気事業法、再エネ特措法など5つの改正法案を一本化しています。再エネ特措法改正では、地域と共生した再エネ電源の導入拡大を支援すべく、一歩踏み込んだ事業規律の措置が講じられる予定です。そこで今回は、GX脱炭素電源法案に盛り込まれた再エネ特措法の改正案について解説します。

(出所:123RF)
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【質問1】再エネ特措法の改正案では、問題のある再エネ発電事業者に対してFIT(固定価格買取制度)による売電収入の支払いを止める制度が導入されると聞きました。どのような仕組みなのでしょうか。また、FIP(フィードインプレミアム)も対象となるのでしょうか。

【回答1】 一部の再エネ発電事業者が法令に違反して発電事業を実施しているケースが問題となっています。法令に違反するなど、FIT/FIPの認定を受けた事業計画に従わずに再エネ発電事業を行うと、経済産業大臣による改善命令の対象となり、場合によってはFIT/FIPの認定が取り消されます。しかし、認定が取り消されるまでの間、再エネ発電事業者は、再エネ賦課金という国民負担を原資とするFIT売電収入やFIPのプレミアムを受け取ることができます。

 そこで再エネ特措法の改正案では、認定の取り消しを待つことなく、法令違反などの問題のある再エネ発電事業に対して、国民負担による支援を受けられないようにする仕組みが追加されました。

 具体的には、FIT/FIPの認定を受けた事業計画に従い再エネ発電事業を実施しない事業者に対して、経済産業大臣が「交付金相当額積立金」を電力広域的運営推進機関に対して積み立てるよう命令を出します。FITの場合は売電収入のうち、再エネ賦課金により支援されている部分、すなわち市場価格を超える部分が「交付金相当額積立金」として積み立ての対象となります。積み立ては、発電事業者が特定契約を締結している電力会社を経由して行われます。売電収入と積み立てが相殺され、発電事業者は売電収入の一部を得られないという仕組みです。

 FIPの場合は、FIPプレミアムに相当する金銭の積み立てが必要です。広域機関からのFIPプレミアムの支払いと、発電事業者から広域機関への積み立てとが相殺され、発電事業者はFIPプレミアムを受領できません。

 積立命令は、FIT/FIP認定の取り消しや改善命令よりも、かなり早いタイミングで行うことが可能です。また、再エネ発電事業者に弁明の機会を与えることなく積立命令を発することが可能と整理されています。

 積み立てたFIT売電代金やFIPプレミアムは、ただちに没収されるわけではありません。発電事業者が問題を解決すれば、積立金を取り戻すことが可能です。一方、違反が解消されずFIT/FIPの認定が取り消された場合、経済産業大臣が事業者に対して、FIT売電代金やFIPのプレミアムを広域機関に返還するよう命じることができる規定も設けられます。

 FIT/FIP上の認定事業者が、発電事業の実施を再三者に委託・再委託している場合には、委託先・再委託先に対して必要かつ適切な監督を行うべき義務が事業者に課されます。適切な監督が行われていない場合も、積立命令の対象となり、FIT売電代金やFIPプレミアムの支払いを受けられなくなる可能性があります。

 改正法案の施行は2024年4月の予定ですが、今のうちから委託先・再委託先として適切な業者を選定しておくことがこれまで以上に重要となります。

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