改正再エネ特措法の施行を2022年4月に控えて、FIP制度の詳細も定まりました。ただ、FIP制度はFIT(固定価格買取制度)に比べて非常に複雑で、理解が難しいという声も聞こえてきます。そこで今回は、FIP制度の基本から制度の詳細まで、実務上のポイントを一挙に解説します。

(出所:123RF)
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【質問1】 FIP制度は以前の解説記事にも説明がありましたが、プレミアムの考え方がやっぱりよく分かりません。( 「FIT廃止が招いた誤解と混乱、次制度は『FIP』で決まり?」)。

【回答1】 たしかにFIPのプレミアムは、直感的に理解することが難しい仕組みになっています。例えば、政府の資料では、FIP制度を表すため下記のような図が用いられています。

FIP制度とFIT制度の比較イメージ
FIP制度とFIT制度の比較イメージ
FITとFIPの比較(出所:資源エネルギー庁)

 まず、図の読み方から説明しましょう。このFIP制度の図は、横軸が時間の経過、縦軸が売電の単価(円/kWh)を表しています。

 その他に、①「補助後の収入」を示す緑色の折れ線、②「市場価格」を示す折れ線、③オレンジ色で塗られた「プレミアム」、そして④「補助後の収入水準(基準価格(FIP価格))」を示す紫色の点線が記されています。

 FIP制度では、FIPの認定を受けたプロジェクトごとに、まず④のFIP価格をあらかじめ定めます。FIP価格は、FIT価格と同様に1年ごとに定めます。資源エネルギー庁の「調達価格等算定委員会」が金額を決めるケースと入札で決めるケースがあります。電源の種類と発電設備の規模に応じて、入札対象かどうかが決まるという点もFITと同様です。

 その後、実際の②「市場価格」の推移を踏まえ、事後的に「参照価格」が決まります。「参照価格」はこの図には示されておらず、細かく複雑な調整を加えて算定するものです。ここでは、②の市場価格の平均が「参照価格」であると考えておきましょう。

 「参照価格」決まったら、ようやく③「プレミアム」の単価が決まります。すなわち、あらかじめ決められた④「FIP価格」と、一定期間ごとに事後的に決まる「参照価格」の差額が、「プレミアム」の単価(円/kWh)なのです。

 ①「補助後の収入」を示す緑色の折れ線は、②「市場価格」に③「プレミアム単価」を足し合わせた金額の推移です。プレミアム単価は一定期間ごとに事後的に決まりますので、緑色の折れ線は後から振り返って見た場合のイメージであって、リアルタイムで「補助後の収入」の価格を知ることはできません。

 ①「補助後の収入」の平均価格が、④「FIP価格」に相当するのですが、時系列としては、前述のとおり、「FIP価格」が先に決まり、①「補助後の収入」の平均価格がFIP価格と同じになるよう、「参照価格」が決まるという流れです。

 発電事業者は、自ら市場取引で売電収入を確保しつつ、FIP制度を通じたプレミアムを電力広域的運営推進機関から受領します。発電事業者はトータルで、①「補助後の収入」で示される単価で売電したのと同等の収入を得られるはずです。それはつまり、④「FIP価格」で売電したのと同等の収入を得られるはず、というのがFIPの基本的な考え方です。

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